TILE TREND COLUMN #11

先人たちの作品やアイデアにインスパイアされ、独自の創造性を広げる手法は
多くの芸術家たちが継承し、これからもつながっていく

　

ルイス・バラガン邸
　

ルイス・バラガンは、20世紀のメキシコの建築家であり、
彼の作品は彼が受けた様々なインスピレーションによって形作られている

ルイス・バラガンは、スイスの建築家 ル・コルビュジェの作品に深く影響を受けた芸術家の一人です。コルビュジェの作品から、空間や構造に対する新しいアプローチ、自然との調和、色彩の重要性などを学び、自然や光、風土に対して深い理解を得て行きました。これらの要素がバラガンの作品に反映され、自然光を取り入れた空間や、風の流れや植物との調和を考えた庭園などが、自然と融合することによる快適さとなって作品を形作っていきます。さらに、彼はメキシコの伝統的な建築や文化にも深い関心を寄せていたため、やがてメキシコの色鮮やかな色彩や建物の装飾などを取り入れるようになり、彼の建築や都市デザインは独特のラテンアメリカの色彩感覚を帯びていきます。色鮮やかな壁・噴水・水盤、そして光を巧みに使いこなした空間設計は、新鮮な驚きと美しさで目にした者の感情を激しく刺激し、今もこれからも、建築やデザインの分野で継承されていくことでしょう。

今もなお、現代の建築家やデザイナーに多大な影響を与え続けている
バラガンによる感情的建築

自然と建築の調和や、モダニズムと伝統を融合させるという思考によって生み出された類いまれなるバラガンの建築作品は、彼の盟友であり芸術家のマティアス・ゲーリッツによって「感情的建築｜エモーショナル・アーキテクチュア」と評されました。独自の美学からなる建築作品や都市空間は、崇高、安息、喜び、孤独、哀愁、沈黙といった人々の複雑な感情を湧き上がらせる情緒に包まれています。それは彼が創造する色鮮やかな壁や、自然光を巧みに操る庭や空間にあるのでしょう。このような人間の感性や感情を重んじるデザインアプローチも、多くの現代の建築家やデザイナーに影響を与えています。
　

バラガンの代表作、メキシコ市北部にそびえる巨大なモニュメント「サテライトタワー」