HOME | Design award | 第11回 DA2026受賞作品(住宅)
 

WINNER 2026

住宅部門

金 賞

 
曲壁の家 -広尾のマンションリノベーション-
株式会社hyappo

設計 株式会社hyappo 撮影 中村晃

区分の奥へ、光と建物の連続性を引き込む住まい
広尾の64m²の細長い区分住戸。南側にしか窓がなく、北側は内部廊下に面するため採光が期待できない。そこで奥まで光の気配を届けるため、LDKを細長く伸ばし、光の通り道として構成した。南からの光を受け止め、奥へ届ける装置として曲面のタイル壁を設け、反射光がやわらかく回り込むようにした。タイルは、光の当たり方で赤にもシルバーにも見える表情を持つものを採用した。時間帯や天候で壁の見え方が変わり、光の移ろいそのものが空間になる。共用廊下の曲面や段々のディテール、外壁の赤いタイルなど、建物が持つ要素を参照し、全体との連続性を意識した。区分に閉じず、光の移ろいと建物のつながりを感じて暮らす住まいを目指した。

壁面を緩やかに湾曲させることで、光を建物の奥まで導く空間構成が⾮常に印象的でした。その壁⾯全体に施されたタイルは、立つ位置によって表情を変え、光の当たり⽅によって⾊彩までも変化して⾒えます。まるでタイルそのものが空間の中に⾃然現象を⽣み出しているような美しさがあり、素材が単なる仕上げではなく、光を可視化する装置として機能している点を、⾼く評価しました。(谷尻誠氏)

銀 賞

 
kofuri~光風理~
株式会社 I.D.Works

設計・施工 株式会社 I.D.Works 川端正人・石井良子

玄関とリビングをひとつの空間に
敷地を有効活用し2台分の車庫を確保しながら、建物の面積を抑えつつ広がりのある居住空間とするため、この家では玄関とリビングをひとつの空間とし、靴の脱ぎ履きの場を可変的に暮らせるようにした。対角に繋げた空間は高低差と中庭を絡ませ、光と風を取込みながら実面積以上の広がりと奥行きを与えている。土間床の素材はタイル張りとしその特性を活かして、冬場は窓からの日射による蓄熱により室内が暖まり、夏場はひんやりと心地良く過ごせることで、年間通じての快適性と清掃性に配慮した。キッチン壁面は空間全体に馴染みながら焼物特有の色むらと凹凸のあるタイルを選び、見る角度や光による微細な表情の変化を楽しめるようにした。

土間リビング床/「アベニュー」NUR-190-A-57
キッチン壁/「リネクシス」RNS-3221

中庭からも含めて柔らかな自然光が巡る、静けさを纏った平屋の住宅だ。玄関から中庭沿いへとL字に伸びる土間には、あえて小さめの艶を抑えたタイルが選択されている。このタイルのスケール感が、住宅のコンパクトな土間スペースに心地よい奥行きを生み出している。キッチンには少し艶がある繊細なタイルが選定されているが、光を柔らかく映しつつ、空間のスケールへの配慮が感じられる。タイルの優しい色合いや質感が中庭の植物や木のインテリアに馴染み、内と外を滑らかに繋いでいる。(成瀬友梨氏)

銅 賞

 
常盤台の長屋
ユウ建築設計室

設計 ユウ建築設計室 施工 多摩総合住宅建設協同組合 撮影 松井進

土から生まれ、土へ還るタイル
常盤台の由来となった常盤の松は、冬でも葉を落とさず青々と茂ることから、変わらぬ豊かさや永遠の象徴とされている。その思想を建築に託し、7戸からなる長屋を計画した。レンガタイルを単なる仕上げではなく建築の構成要素として位置づけ、外壁から地面へと連続する構成により、空間にやわらかな一体感を生み出している。レンガは土を焼いてつくられ、時間とともに風合いを深めながら、やがて自然へと還る素材である。本計画ではその素材特性を空間構成に取り込み、時間の経過とともに街に馴染み、永く親しまれる風景の創出を目指した。

タイルを用いた大胆でシンプルなアイデアが、印象的な視覚効果を生み出している。「外壁→外床→外壁」と連続するタイルによって、一つの建物がパカっと二つに割れたかのようなユーモラスな風景を住宅街に提供する。そして同時に、その屋外空間をインテリアのような質を持った空間へ転換し、その空間に、中庭へアプローチする前の「前室」のような意味合いも持たせている。なお、もしかすると、この建物の前を通る子どもたちにとって、ずっと心のどこかに残る原風景になるかもしれないと感じた。(塩田健一氏)

入 賞

 
袖壁の間
ATELIER405

設計 ATELIER405 西村達矢 撮影 貝出翔太郎

揺らぎのある6グリッド
生活リズムの異なる家族が、互いの気配を感じながら気ままに集える住まいを目指した。3LDKの住戸を主従関係のない6グリッドによって再編し、袖壁をグリッドの交点から900mmずつ控えて配置した。交点を解放することで半個室的な居場所が緩やかに連なり、身体の移動とともに広がりが変化する「伸縮する空間」を形成している。壁で囲まれたユニットバスの外周には光沢のあるタイルを採用し、南側の光を反射させて通路へ導くとともに、閉じたボリュームの表層に周囲の風景を重ねている。また、既存躯体の不陸にタイル面を追従させることで、空間に微細な揺らぎを与えるとともに、既存建物のもつ時間を新たな空間へと引き継いでいる。

部屋を完全に仕切らず袖壁で構成することで、住まい全体に光と風、そして家族の気配が行き渡るのびやかな空間が実現されている。特筆すべきは、既存のRC躯体や合板の素地というマットな世界観に対し、浴室周りに配された艶やかなタイルの対比である。光や風景を反射するタイルは、見る角度によって鏡やスクリーンのように働き、壁自体の圧迫感を消去している。それによって空間に伸びやかな奥行きを与えるとともに、空間全体の密度を引き上げることに成功している。(成瀬友梨氏)

入 賞

 
Parkside hills(パークサイドヒルズ)
積水ハウス株式会社

設計 積水ハウス株式会社 設計課 杉本多樹

面と緑の均衡
赤塚公園の斜面林や湿地帯に隣接する環境を背景に、大判タイルによる面の構成によって空間の骨格を形成した。フラットな外壁は、石調タイルの質感とスケールを際立たせながら光と影を受け止め、時間とともに表情を変化させ、公園の緑と呼応しながら空間に静かな響きをもたらす。素材を外部から内部へ連続させることで、無機と有機が拮抗しつつ均衡する関係を生み、周辺環境や場の記憶と重なり合いながら、日常の中に豊かな時間の変化と感覚的な奥行きを与える空間体験を創出している。

シンプルな構成と最⼩限のマテリアルによって、最⼤限の効果を引き出している点が印象的でした。建築が主張しすぎることなく、その場所で営まれる暮らしや時間を引き⽴てる脇役に徹していることが、この作品の⼤きな魅⼒です。流⾏に左右されない普遍性を備えたデザインとして⾼く評価しました。(谷尻誠氏)

入 賞

 
RANCH145
株式会社工藤工務店

幾何と色彩が織りなす、時を映すキッチン空間
落ち着いた「クールレジン」のグリーンを基調に、不規則に差し込まれた淡い色のタイルが心地よいリズムを生む壁面。突板のアメリカンブラックチェリーを用いた造作キッチンが空間に深みと温もりを添え、海外住まいが長かった施主の感性に寄り添う設えに。直線的なフォルムと色彩の調和が、洗練とくつろぎを同時に叶える。

住宅のキッチンで壁面にタイルを使用した空間である。タイル張りの壁面越しに、開口部から屋外の樹木や植栽が見えている。その写真1枚で、心を打たれて、迷いなく投票した。タイルの色彩を利用して、屋外の風景を抽象的に”生け捕り”にして、室内に取り込んでいる。屋外と室内に連続性を持たせようとする時、ガラス面を大きくしたり開放したりと、いろいろな方法が考えられるが、こうした抑制的でポエティックな方法もあるのだと気付かされた。その方法に、タイルのサイズと色味がうまく合致している。(塩田健一氏)

谷尻誠 審査員特別賞

 
酒蔵の住処
株式会社アーキタンツ福岡一級建築士事務所

設計 株式会社アーキタンツ福岡一級建築士事務所 撮影 石井紀久

住空間のレイヤー分けとその連続性
千葉県九十九里、古くからの酒蔵内に建てられた住宅である。住宅のパブリックスペース(リビング等)は、酒蔵で働くスタッフとまたその家族、地域住民、取引先や関係者の気軽に集える空間が要求された。そこには、プライベート(個室、水廻り)~パブリック、パブリックについても、ダイニング~リビング~インナーテラス~BBQテラスという、公共性にもレイヤーを持たせる空間とした。その空間の連続性を表するように天井の上り梁が外部までリズムをつくり、床の同材タイルがその繋がりを強調する。室内の床から、インナーテラスの床に繋がり、BBQテラスのBBQ台、ベンチ、作業台まで同タイルで仕上げ統一感のある空間とした。

内外を同じタイルで連続的に仕上げることで、建築と⾵景、暮らしが⼀体となる空間がつくられていました。⼤きな軒下で営まれる⽇常の様⼦からは、この建築が完成した瞬間ではなく、使われることで価値を増していくことが伝わってきます。その豊かな時間まで設計されていることを評価しました。(谷尻誠氏)

成瀬友梨 審査員特別賞

 
ネクサスワールド石山棟の一室
山根製作所株式会社

撮影 YASHIRO PHOTO OFFICE

それぞれの時間軸に敬意を込めて
「ネクサスワールド」の石山棟の一室のリノベーション。前入居者が大幅な改修をしており、石山棟オリジナルの柿渋の仕上げなどは全て白いクロス・塗装・ビニルタイルなどで上書きされていた。エントランスと廊下は可能な限りオリジナルの状態を再現することを目指した。共用部から室内を抜けバルコニーまで連続する「うちどおり」のタイルを復元し、壁は柿渋塗装の合板仕上げとした。カーテンボックスや、キッチンの下がり天井、解体された収納部分の残された天井材など空間の中に登場する凸部にカラーを加え、オリジナルのデザインボキャブラリーを運用しながら、向かいのマークマック棟と一体となり広がりを感じられる空間とした。

どこまでがオリジナルで、どこからが新しい創作なのかを際立たせることが重要ではなく、新旧の痕跡を断絶させずにブリコラージュすることで、より豊かな空間を生み出そうとする設計者の想いが伝わってくる。 石山氏のインテリアの重要要素であった「うちどおり」を復元する際も、タイルの質感や色味がオリジナルへ寄り添うように吟味されている。対象への詳細なリサーチを経て設計されており、その誠実な姿勢に深い共感を覚える。(成瀬友梨氏)

商店建築賞(特別賞)

 
グリムシングハウス
株式会社and to建築設計事務所

撮影 Koji Fujii / TOREAL Inc.

2つの「見えかくれ」により世界の解像度をあげる
北側傾斜で採光が得づらい住宅密集地において、北庭との多角的な繋がりと、ふたつの「見えかくれ」の変化が自然の移ろいを捉える。一つ目は遮景を繰り返し重ね、視界の切り替わりとスケールの緩急による動的な体験の見えかくれ。二つ目は、光と影の変化を顕在化する線と、自然の移ろいを映し込む面が、時間や季節の変化を増幅させる静的な見えかくれ。タイルを用いた天井高さが低い空間は、タイルをカットして畳割とし、目地を畳の縁に見立て幅広とした。タイルの面と目地がつくる線が陰影をつくり、刻一刻と変化する都市では見落としてしまうほどの移ろいを素材が捉え、世界の解像度をあげる事を試みた。

リビング・露庭室・ダイニング床・浴室床壁/「セメンティング」ORG-U7840(一部カット加工品)
洗面床/「セメンティング」ORG-X7840

なんとも贅沢な住空間である。質感やむらのある自然素材に近い素材が多数使われ、室内が、触れてみたくなるテクスチュアで溢れている。屋外と屋内の境界エリアの床に張られたタイルは、自然光と植栽を映し出し、庭を室内に拡張している。ダイニングの床にザラッとした大判タイルを使い、目地も太く確保することで、やや荒々しい雰囲気を生み出し、そこが屋外空間の延長であるかのように過ごせる空間となっている。畳を模した張り方も、ユーモラスである。浴室の床に張られた大判タイルも、横から差し込む自然光を拾い、リゾートホテルのような豊かな時間を生み出してくれそうだ。(塩田健一氏)

集合住宅賞(特別賞)

 
LUGEND
積水ハウス株式会社

設計 積水ハウス株式会社 市川智己 施工・撮影 積水ハウス株式会社

灯す
名古屋市のはずれ名東区に位置する共同住宅。5×5の吹抜けを内包するラウンジ空間を物件の目玉とし、電気暖炉を据え明確な差別化を図ることで収益の向上を図りました。エクステリア・インテリア共にシンメトリーを軸に設計。ルーバーやタイル、電気暖炉等の多要素を、大判素材を中心に採用する事でノイズレスに設計を行いました。

今回の応募作品の中でも、とりわけ上質でラグジュアリーな空間を実現していた作品でした。タイルが空間そのものの質を⾼め、豊かな時間を演出する素材へと進化しています。その可能性を最も⾼い完成度で表現した作品であると評価しました。(谷尻誠氏)

過去の開催情報

第10回

Design Award 2025

第9回

Design Award 2024

第8回

Design Award 2023

第7回

Design Award 2022

第6回

Design Award 2021

第5回

Design Award 2020

第4回

Design Award 2019

第3回

Design Award 2018

第2回

Design Award 2017

第1回

Design Award 2015