KItoNOKO
ure
設計 ure 構造設計 なわけんジム 設備設計 島津設計
ライティング Filaments inc. 施工 日興ホーム・アスク創建 撮影 足袋井竜也
『家』の空気感をまとう木造オフィス
硬質な工業地域の中に、「家」の空気を持ち込むことから計画を始めた。住宅事業を展開する企業の拠点「KItoNOKO」は、木と鋸の名が示すように、木造住宅を原点としてきたものづくりの精神を体現する場である。建物は910mmモジュールを基調とした住宅スケールで構成し、商談室の寸法にも住まいに馴染みのある感覚を取り入れた。無塗装の木材の香り、木格子や天井の木垂木が生み出す光と陰影、吹抜けを中心とした回遊動線が住まいの延長のような居心地をもたらす。床には一間半のグリッドにタイルを敷き、木造架構と呼応する空間の秩序を表現した。グリッドを45°傾け街に開き、植栽が硬質な埋立地の風景に柔らかな環境を生む。
住宅スケールのグリッドを基調に設定し、それを厳格に貫くことで、窓辺の小さな居場所と建物全体をつなぐ伸びやかな空間の抜けを生み出している。天井の架構グリッドに呼応させるように、床にもグリッドを走らせ、その重要な構成要素としてタイルが選ばれている。天井から床まで一貫したコンセプトを徹底させつつも、表情にわずかなむらのある艶を抑えた黒いタイルが、まるで住宅の土間のような親密な空気感を醸し出し、窓際の居心地のよさを支えている。幾何学的な厳密さと、土着的な素材の風合いが見事に融合した快作だ。(成瀬友梨氏)
Niwa fukuoka
ANONIMAL design community / STUDIO MOUN
Architect: ANONIMAL design community / STUDIO MOUN Construction: Matsuya Seisakusho Ltd.
Lighting Design: Yu light Furniture Styling: Acht Photo: Kouichi Torimura
都市の余白における滞在体験の再構築
屋上広場という都市の余白において、内部と外部の関係性を再編し、滞在体験の再構築を試みたカフェである。広場へと連続する曲面カウンターが視線と行為を外部へ導き、空間は、都市に開かれた明と、光を抑えた陰の対比によって構成される。光の濃度差は同一空間に異なる時間の層を生み、緩やかな床の勾配は移動と滞在を連続させる。土壁には珈琲粉を混入し、粒子が揺らぐ質感として空間に現れ、都市の上に重なる時間の気配を静かに立ち上げている。
このコーヒースタンドでは、床面、壁面、カウンターが屋外から室内の奥へと人の視線や動きを導いていく。床面の一部が盛り上がり、まるでランドスケープのようなインテリアである。このような意匠において、床面にモルタルを選択する設計者が多いのではないかと思うが、ここでは、色彩とテクスチュアによって大地を感じさせるタイルを選択している点が、適材適所で見事だと感じた。さらに、視覚的効果だけでなく、タイルが足の裏から身体にダイレクトに訴えかける素材感も魅力的だろう。(塩田健一氏)
もう一つの京都 雨情草庵 瑞雨
株式会社石井建築事務所
撮影 KOKOIRO
丹後のうつろいを映す
海の京都と呼ばれる京丹後地方のはなれ宿。気候の移り変わりが激しい丹後の自然を慈しむ特別室として、東北地方より移築された古民家を改修した。建物の中心に座する吹抜け空間、その床板をスレート調のタイルに張替えることで土間ラウンジに仕上げている。濡縁により庭への繋がりを作りつつ、トーンを落とした大きな室内空間を用いたカメラオブスキュラの原理で庭を切り取り、像が結実されるところにソファを配置した。竹林に囲まれた半露天風呂では浴槽内を磁器質、せっ器質、そして燻し瓦とすべてモノトーンながら各々に異なる質感を混在させることで、風にそよぎ、陽が木漏れ、温泉が注ぎ込む水面に呼応した揺らぎのある水鏡とした。
リビング床/「ラバーニャ」CCC-U7670・「ロックソルト」CMI-U5450(ミックス張り)
浴槽内/「エリアボーダー彩」LB-123:806:823=63:27:10%ランダムミックス
古⺠家を改修した空間の中で、タイルの持つ質感や表情が既存建築と美しく調和していました。古いものを壊すのではなく、その価値を受け継ぎながら新しい時間へとつないでいく。タイルが過去と現在、そして未来を結ぶ素材として機能していることを感じさせる作品でした。既存ストックの利⽤が再考されている現代において、既存の可能性を豊かに表現している点を評価しました。(谷尻誠氏)
ゑびや商店
ZÜMA.INC
デザイン・設計・デザイン監理 ZÜMA.INC 菊田和馬
施工 株式会社山翠舎 クライアント 有限会社ゑびや 撮影 近藤雅美
拡張される秩序
伊勢神宮内宮・おかげ横丁におけるギフトショップの改装プロジェクト。スペース縮小という与件に対し、狭小空間ならではの没入感を生み出すデザインで応答した。空間の主役は、床から壁面までを覆うブランドカラーのタイルである。空間全体を単一素材で包み込むことで力強い世界観を構築するだけでなく、タイル寸法というモジュールに合わせて設計した杉合板の什器を設える事で、多種多様な商品を幾何学的な美しさをもって調和させた。さらに、ミラーの反射を利用してタイルによる幾何学的な空間を視覚的に拡張し、小規模でありながら無限の奥行きを感じさせる店舗空間を創出している。
「カサカルダ」CCC-F5730(床はカット加工品)
整然と並ぶ商品パッケージのリズム感や「えびせんべい」の赤色を、赤色系のタイルで受けて、店内全体に拡張している。そうして一つの色彩や素材に囲まれることで、特別感や非日常感が空間に生まれている。また、複数種類の赤色を用いることで、情報量を増やして賑やかさを生み出し、どんな商品が置かれても、それを受け入れる許容度も持ち合わせている。なお、長方形で販売されている「カサカルダ」を正方形にカットして床面にモザイクタイルのように張ることで、そうした賑やかさを生むと同時に、X軸方向にもY軸方向にも方向性を生み出さず、ニュートラルな印象を確保している。(塩田健一氏)
Shisha Cafe & Sweets Bar THIRD PLACE
tyto
設計 tyto 三宅慶輔 照明設計 Yu light 種子島ゆり 撮影 中辻亮(余所)
落ち着きと格式を
一般的なカフェではなく、水たばこを楽しみながらゆっくりと日常から逃れるための空間。華美でインスタントな美しさではなく、クラシカルな装飾を一段階次元を落とし、印象だけを抽出する。ベニヤに溝を刻んだ壁、荒さを残しながらペンキで均一にしたコンクリート床、照明の無い天井。口数の少ない素材の中で、グリッドとしてのタイルが、空間に静かな緊張感と格をもたらしている。装飾に頼らず、素材そのものの重さで場の深みをつくる。そこにレトロフューチャーな感性を溶け込ませることで、派手な演出でも、ミニマリズムでもない、クラシカルな趣に、モダンな感覚を加え、落ち着きと深み、新しさを兼ね備えた空間を実現した。
カフェのコンセプトを体現した、大人のためのしっとりとした空間だ。溝を設けた合板、塗装したコンクリート床、ベルベットのカーテン、やや艶のあるタイルなど、多彩な色や質感の素材を用いながら、隣接する関係が入念に設計されている。メインフロアから段差を設けたタイル床は、間接照明の光によって浮遊感を獲得し、照度を抑えた空間の中でワイヤーフレームのような抽象的なラインを際立たせている。異素材の繊細なコラージュによる密度の高いデザインである。(成瀬由梨氏)
榊原温泉 禊湯
設計事務所岡昇平
設計 設計事務所岡昇平
タイルが映す禊の湯
榊原温泉は、古くから「湯ごりの地」として知られ、京都から伊勢神宮へ参拝する前に、身を清める“禊”の湯として親しまれてきました。「禊湯」は、その禊の思想を現代へと再解釈した、一棟貸しの宿泊施設です。回廊型の浴室は、中央の庭を囲むように巡り、始まりも終わりもない循環する空間として構成されています。白いタイルで統一された壁と床、そして水深1mまで緩やかに変化する浴槽の段差によって、温泉水は光を受けながら繊細な色のグラデーションを生み出します。その移ろう色彩は、禊のための清らかな温泉水を表現する“色のメタファー”でもあります。湯に身を委ね、静かに巡る体験そのものが、新たな禊を映し出しています。
壁・湯船/「シクラスⅡ」SIC-R2010F
床・湯船/「シクラスⅡ」SIC-R2010
情報量を極限まで抑えた空間構成の中で、⽔深による⽔のグラデーションが⾮常に美しい⾵景を⽣み出していました。特別な演出に頼ることなく、⽇常の中に潜む美しさを丁寧に引き出している点が印象的でした。空間全体が⼀つのアート作品のような静かな存在感を持っていたことを⾼く評価しました。(谷尻誠氏)
鶏鶏餃子 JIJI GYOZA
株式会社マイト
株式会社マイト 佐々木康至
錦市場に息づく鶏と、タイルの生命力
京都・錦市場にある店舗でのモザイクタイル壁画です。伊藤若冲ゆかりの地で、国内外から多くのお客様が訪れるこの市場に、新しい食体験と共に、思わず足を止めるような「日本のWow!」を届けたいと考えました。ただ鶏を描くのではなく、タイルを選ぶ、割る、合わせる、張る。その工程を重ねながら「タイルにできること、タイルにしかできないこと」をこの壁面に込めました。
「ヴィトラル」EKP-F1520・「マシア」EK-H3030・「マヨリカモデルナ」ISC-F6740・「ボルサーリ」MZU-F7700
細かく割ったタイルを緻密に組み合わせ、鶏たちの溢れる生命感と圧倒的な躍動感をモザイク画として見事に表現している。特に鋭い目力、羽毛、蹴爪や足先の描写は圧巻だ。主題の鶏だけでなく、背景にも細かく破砕したタイルのランダムなパターンを敷き詰めることで、壁面全体の密度を極限まで高めている。手仕事が生み出す圧倒的な熱量が結晶化し、食の空間に華やかさと記憶に残る豊かな体験をもたらしている、非常に魅力的な作品だ。(成瀬友梨氏)
育みの丘 紡ぎの学舎
株式会社 RIN 建築設計事務所/RIN architect & associates
設計 株式会社 RIN 建築設計事務所/RIN architect & associates 撮影 Nacása & Partners Inc
トイレデザイン:色彩・質感と時間軸のマリアージュ
愛知県豊明市の自然豊かな丘の上に、幼稚園・小学校棟と中学・高校棟の二棟の新設を柱とした教育施設“育みの丘 紡ぎの学舎”が完成した。施設全体として規律と変化のある空間を志向する中で、心と健康を支えるトイレ空間においても、長い就学期間を考慮した、ある統一性を内包しながら子どもたちの成長に沿った変遷が感じられる空間を目指した。具体的には、空間をシャープにみせる大判タイルに対して、豊富な色彩と釉薬の美しさをもつボーダータイルを好対照な主軸とした。ボーダータイルは、各教育課程(幼稚園・小学校・中学・高校)にあわせた色と質感の組み合わせを無数にスタディし、子どもたち自身が豊かな成長が感じられるものを志向した。
幼稚園部(上3枚)
「エリアボーダー彩」LB-813・815・「クオーリ」6色特注ミックス・「サテリッティ」VO-F6100
「スウィートグラス」ACB-R3300
小学校部2階女子トイレ(下左)
「エリアボーダー彩」LB-815:814:817=2:1:1ミックス・「ジェオメロウ」MRZ-F2620
小学校部1階男子トイレ(下中央左)
「エリアボーダー彩」LB-812:813:814=2:2:1ミックス・「ジェオメロウ」MRZ-F2600
中学部1階女子トイレ(下中央右)
「エリアボーダー彩」LB-815:9742:422:805=5:4:3:3ミックス・「ジェオメロウ」MRZ-F2610
中高棟2階洗面準備室(下右)
「エリアボーダー彩」LB-422:804:825:806=4:4:4:3ミックス・「フィオレッティ」ASB-1313-G13
幼稚園から高校まで、それぞれの学齢に応じたスケールや使い勝手に配慮し、丁寧に計画されたトイレ・手洗い空間だ。子どもたちが毎日使う場所は、安心感に満ち、訪れるだけで心が弾むような空間であってほしい。暗く閉じたイメージになりがちなトイレにおいて、色鮮やかなタイルでポップに彩り、居心地のよい明るい空間を作り出した意義は大きい。ここで学んだ子どもたちが、将来振り返ったときに、トイレのカラフルなタイルを思い出すかもしれない、そんな予感のするデザインだ。(成瀬友梨氏)
THE KOGAICHO
株式会社STUDIO JUGGERNAUT
設計監理 株式会社STUDIO JUGGERNAUT 施工 坪井工業株式会社 撮影 Yuuki Nemoto
都市の記憶と営みを映す、斑点のファサード
江戸期の笄町の記憶と、隠れ家的な飲食店が連なる「ビストロ通り」の現在が重なる場所に建つ、飲食・物販・住宅の複合施設である。水平に積層したボリュームと立体的なパサージュにより、路地的なスケールを建築内部へ引き込んだ。外装には、大胆な斑点がランダムに現れるタイルを採用。天然石のような奥行きと手仕事的な揺らぎをもつ表情が、多様な用途をひとつに束ねながら、街に開いた半屋外空間や人々の気配を柔らかく受け止める。
⼀種類のタイルだけで建築全体を構成しながら、細部のディテールまで徹底してつくり込まれていることが写真からも伝わってきました。施⼯精度を極限まで⾼めることで、情報を削ぎ落としながら空間の純度を⾼めています。素材を増やすのではなく、絞り込むことで建築の魅⼒を引き出している点を評価しました。(谷尻誠氏)
過去の開催情報
| 第10回 | |
|---|---|
| 第9回 | |
| 第8回 | |
| 第7回 | |
| 第6回 | |
| 第5回 | |
| 第4回 | |
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| 第1回 |