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TILE TREND COLUMN #48

時を重ねた石、ポートランドストーン

穏やかな色合いと繊細な表情で、建築に品格をもたらす石があります。イギリスを代表する天然石「ポートランドストーン」は、長い歴史の中で、セント・ポール大聖堂をはじめとする数々の名建築を形づくってきました。穏やかな灰白色と細かな鉱物の層がつくる控えめな表情が特徴で、建築石材として年月を重ねながらその土地ならではの風景をつくり上げてきました。2026年9月の新商品「ノリヴェン」は、ポートランドストーンの美しい色と歴史の深みを受け継ぎながら、現代の空間にふさわしい表情へと再解釈したコレクションです。今回は、英国の建築とともに時を重ねてきたポートランドストーンの背景をたどりながら、その魅力を現代へとつなぐ「ノリヴェン」をご紹介します。


新商品「ノリヴェン」 床:ORG-X6010 シャワーブース床:カラー6210G 壁:ORG-AC6010

海から生まれた、英国を代表する石

ポートランドストーンは、イングランド南部・ドーセット州のポートランド島を中心に産出する石灰岩(ライムストーン)で、その起源は約1億4500万年前のジュラ紀末期にまで遡ります。かつてこの地域を覆っていた温暖で浅い海の中で石灰質の粒子や貝殻などが堆積し、膨大な年月を経てこの美しい岩石が形成されました。地層には今も貝類などの痕跡が留められており、石の中に閉じ込められた化石からその成り立ちを垣間見ることができます。建築石材として知られるポートランドストーンは、淡いクリームから灰白色を基調とした穏やかな色合いが特徴です。よく見ると細かな鉱物の粒や層があり、石そのものは控えめでありながら、建築の美しさを引き立ててくれる点が長く愛されてきた理由のひとつです。


イギリス南部・ドーセット州のポートランド島にある採石場

ポートランド島の海岸に露出するポートランドストーンの地層
Jim Champion / Disused coastal quarry, Portland Bill, via Wikimedia Commons

セント・ポール大聖堂|石がつくる、建築の輪郭

ポートランドストーンは、英国の建築史を語るうえでも重要な存在で、なかでもその象徴ともいえるのがロンドンのセント・ポール大聖堂(St Paul's Cathedral)です。現在の大聖堂が建つ以前、この場所には中世の「旧セント・ポール大聖堂(Old St Paul’s)」がありました。しかし1666年、ロンドン市街を襲った大火によって焼失し、1669年に復興計画の総監督を任されたのが建築家クリストファー・レンでした。1675年に建設が始まり、35年以上にわたる大事業を経て、1711年に現在のセント・ポール大聖堂が完成しました。その壮大な建築を形づくった主要な素材が、ポートランドストーンです。セント・ポール大聖堂でまず目を引くのは、ロンドンの空に大きく立ち上がるドームです。現在の姿は当初から不動の完成図があったわけではなく、建設が進む中で設計が幾度も見直されました。1680年代半ば以降、ドームはより高く豊かな造形へと磨き上げられ、1708年には頂部のランタン(採光塔)に最後の石が据えられました。巨大なドーム、整然と並ぶ列柱、深く刻まれた窓や彫刻──その複雑な造形をひとつの建築としてまとめ上げているのが、外壁を包むポートランドストーンの穏やかな灰白色です。控えめな石肌だからこそ、光が当たることで柱や彫刻の陰影が際立ち、ドームの曲面がより美しく見えてきます。ポートランドストーンは、建築を華やかに「飾る」というよりも建築そのものの輪郭を静かに描く石ともいえるでしょう。そして、2022年に新設されたバリアフリーのエントランスでも、壁面には既存の外観と調和するように大聖堂と同じポートランドストーンが用いられました。300年以上前に建てられた大聖堂に、現代の改修においても一貫して同じポートランドストーンが採用されていることからも、この石が持つ普遍の価値と、建築史における揺るぎない正当性を雄弁に物語っています。


セント・ポール大聖堂(St Paul's Cathedral)

Tilman2007, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

旧セント・ポール大聖堂(Old St Paul’s)|中世の姿を復元した図 H W Brewer, Public domain, via Wikimedia Commons

ポートランドストーンを現代の空間へ
ノリヴェン / Noriven  NEW

「ノリヴェン」は、ポートランドストーンをモチーフに、その美しい灰白色と歴史を感じさせる表情を現代的に再解釈したコレクションです。表面には、鉱物が長い時間をかけて積み重なったような細かな層や、淡く移ろう色の濃淡が表現されています。歴史を感じさせる石の深みと、現代のインテリアにもなじむ洗練された質感の2つが重なり合うことで、クラシックにもモダンにも偏らない落ち着いた表情をつくり出しています。


「ノリヴェン」カラー6110とポートランドストーン

ORG-AC6220G・AC6020

石の切り方が生む、2つの表情

天然石の中には、同じ石であっても地層に対してどの方向から切り出すかによってその模様が大きく変わる石種があります。「ノリヴェン」は、その違いを活かした2つの石目を表現したコレクションです。ひとつは、地層に対して水平に切る「クロスカット」を思わせる表情で、細かな鉱物の重なりが面の全体に広がり、雲のような穏やかな濃淡を描きます。大きな面に施工しても主張しすぎず、光を受けながら石肌に宿る繊細な動きを空間に生み出します。もうひとつは、地層に沿って切る「ヴェインカット」を思わせる表情で、横方向へ伸びる層が空間に方向性や流れをつくります。同じ石をモチーフとしながら、切り取る方向によって異なる表情が現れる奥深さも、ポートランドストーンを現代的に楽しむ「ノリヴェン」の魅力のひとつです。


床:ORG-AC6140(ヴェインカット) 壁:ORG-AC6040(クロスカット)

形状は、空間のベースとして大きく使える1200×600角・600角と、300角のモザイクパターンを展開しています。1200×600角には平と粗目があり、用途に合わせて使い分けることができます。1200×600角を床や壁へ大きく広げれば、ポートランドストーンらしい穏やかな層や色の濃淡を空間全体で感じることができます。平と粗目を使い分けることで、屋内から屋外まで石のイメージをつなげることも可能です。一方、300角のモザイクパターンは、小さな長方形を組み合わせたパターンが、大判サイズとは異なる細やかなリズムを生み出します。古い石造建築の壁を思わせる表情は、キッチンや洗面室、アクセントウォールなど、小面積にも取り入れやすいデザインです。木材や金属といった異素材と合わせても強く主張しすぎず、空間全体を穏やかにまとめてくれます。


屋内床:ORG-AC6030 屋外床:ORG-AC6230G 壁:ORG-R6031

ORG-R6031
6010(平)・6210G(粗目)
CROSS
6020(平)・6220G(粗目)
CROSS
6030(平)・6230G(粗目)
CROSS
6040(平)・6240G(粗目)
CROSS
6050(平)・6250G(粗目)
CROSS
6110(平)・6310G(粗目)
VEIN
6120(平)・6320G(粗目)
VEIN
6130(平)・6330G(粗目)
VEIN
6140(平)・6340G(粗目)
VEIN
6150(平)・6350G(粗目)
VEIN

海の中で長い年月をかけて生まれ、セント・ポール大聖堂をはじめとする英国の建築を形づくってきたポートランドストーン。「ノリヴェン」は、そんな歴史的な石をそのまま模倣するのではなく、鉱物の層や穏やかな色彩、控えめなコントラストといった本質的な美しさを受け継ぎながら現代の空間へとつないでいます。新しいものをつくることと、過去を受け継ぐこと──その二つは、決して相反することではありません。時を重ねても色褪せない石の美しさを、これからの空間へ。ポートランドストーンの長い記憶を継承する「ノリヴェン」が、現代の建築にも穏やかな品格と歴史的価値をもたらしてくれるでしょう。

 
 

2026.9.4

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