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TILE TREND COLUMN #45

二つの石、二つの質感

トラバーチンとオニキス、マットと艶。異なる個性を重ねた、新しい石目表現

天然石の魅力は、色や模様だけではありません。窓から差し込む自然光や、壁面に広がる間接照明──光の向きや強さが変わるたび、石の層や脈模様が静かに浮かび上がり、同じ空間に異なる表情をもたらします。近年のタイルデザインにおいても、天然石の色や模様をどれほど精緻に再現できるかということだけでなく、光による陰影や指先に伝わる質感まで素材を多面的に表現することが重視されています。コラムvol.43「琥珀の光とタージ・マハル」では、温もりや自然とのつながりを求める時代の変化とともに、トラバーチンが再び注目を集めている背景を少しご紹介しました。今回は、年々進化し続けるトラバーチン表現を象徴する新商品「ポルトヴェーネレ」を通して、マットな石肌にさりげない艶を添える新しいデザインをご紹介します。


新商品「ポルトヴェーネレ」ILT-AC7710・U7710

コラムvol.43でも触れた通り、トラバーチンはアイボリーやベージュ、ウォームグレーといった大地を思わせる色調と、多孔質な石肌が生み出す不規則な陰影を特徴とする天然石です。整いすぎていない自然な表情が空間に柔らかさをもたらし、2022~2023年頃からは、海外のインテリアやCERSAIEでもその復権を象徴する提案が目立つようになりました。この流れは、一過性の流行で終わることなく、現在も石材表現の大きな潮流のひとつとして続いています。ただし、近年見られるのは、天然のトラバーチンをそのまま忠実に再現するだけのデザインではありません。石の層や温かな色調を受け継ぎながら、ほかの石が持つ透明感や光沢、触感を重ね合わせることで、現実には存在しない新しい素材をつくり出す試みです。素材の個性を自由に組み合わせる「再解釈」の段階へ進んでいるのです。
 

オニキスとトラバーチンが重なる石

新商品「ポルトヴェーネレ」は、オニキスの幻想的な美しさと、トラバーチンの伝統的な格調を融合したコレクションです。トラバーチンのゆったりと流れるヴェインの層に、オニキスのような明るさと透明感を重ねることで、クォーツサイトを思わせるやわらかな石目模様へと仕上げています。流れるような石模様は主張しすぎることなく、広い面に施工することで空間に落ち着きと奥行きをもたらします。天然石らしい上品さがありながらもクラシックな印象に偏らず、現代のインテリアに自然に溶け込む洗練された表情が魅力のひとつです。オニキスとトラバーチンをそれぞれ独立して表現するのではなく、二つの石がもつ個性を一つに重ね合わせた、一歩先を行くトラバーチン表現といえるでしょう。


オニキス

トラバーチン(ヴェインカット)

マットの質感に配された「さりげない艶」

ここ数年のインテリアの潮流では、面全体が均一に光る鏡面仕上げよりも、自然素材と調和しやすく空間に落ち着きをもたらすマットな質感が支持されています。また最近では、全てを均一なマットで仕上げるのではなく、その一部に艶のあるマテリアルを付加する表現も見られるようになっています。マットな質感に宿る、石の脈に沿った繊細な輝き──角度によって現れる「さりげない艶」は、素材の奥行きを引き立て、上質な華やかさを演出します。穏やかなマットの石肌に模様をなぞるような上品な光沢を施した「ポルトヴェーネレ」は、正面から見たときには端正な石目として空間に溶け込み、斜めから光が差し込むと流れるような模様が浮かび上がります。


ILT-AC7720・U7720

“ヴィーナスの港”から生まれた名前

「ポルトヴェーネレ」という商品名は、イタリア北西部・リグーリア州に位置する港町、ポルトヴェーネレに由来します。「Porto(ポルト)」はイタリア語で「港」、「Venere(ヴェーネレ)」は「女神(ヴィーナス)」を意味し、“ヴィーナスの港”という意味を持つ美しい地名です。ポルトヴェーネレと周辺のチンクエ・テッレ、パルマリア島、ティーノ島、ティネット島は、海岸に築かれた街並みと周囲の景観が高く評価され、ユネスコ世界遺産に登録されています。海岸に沿って並ぶパステルカラーの建物、深い青を湛えた海、斜面に広がる緑。そして、時間とともに街を染め上げていく地中海の光──華やかでありながら、どこか落ち着きと品格を感じさせるこの景観は、自然な上品さを持つ新商品「ポルトヴェーネレ」の世界観と重なります。トラバーチンの層を思わせる流れ模様と、オニキスのように光を取り込む透明感──この表情には、海と光に包まれた美しい港町の風景を、一枚のタイルの中へ閉じ込めたような趣があります。


ポルトヴェーネレの街並み

二つの石の個性を掛け合わせたタイル
ポルトヴェーネレ / Portovenere  NEW

「ポルトヴェーネレ」は、明るくやわらかなトーンを中心とした4色を展開しています。温かなアイボリーやベージュ、穏やかなグレージュ、わずかに青みを帯びた淡い色調。それぞれに繊細な濃淡と流れるような模様が重なり合い、ウォームニュートラルを基調とした空間に心地よい奥行きをもたらします。形状は、石模様を伸びやかに見せる1200×600角と、小面積にも取り入れやすい600×300角の2種類で、屋内の壁や床、浴室壁などに使用でき、床と壁へ同じ色柄を連続させることで石の中に包み込まれるような感覚を演出できます。リビングの床や壁に空間のベースとして広く取り入れると、トラバーチンを思わせる層が建築的な伸びやかさを生み出します。キッチンや洗面室では、木材やブロンズ、真鍮などの温かみのある素材と組み合わせることで、オニキスのような華やかさと艶がより引き立ちます。また、窓から差し込む自然光や間接照明によって、マットな石肌に施された光沢がさりげなく浮かび上がります。色や模様だけではなく、“どこから光が入り、どの角度から眺めるのか”という視点を意識することで、「ポルトヴェーネレ」の魅力はより深く引き出されるでしょう。


ILT-AC7740

ILT-U7740
7710 / Bianco
7720 / Beige
7730 / Grigio
7740 / Azzurro

現在タイルの潮流は、天然石を忠実に再現することから、異なる石の記憶や質感を重ね、新しいマテリアルを創造する方向へと広がりつつあります。トラバーチンの温もりと格調、オニキスの透明感──そして、穏やかなマットの表面に浮かび上がる、さりげない艶。光を受けるたびに表情を変えるその佇まいが、これからの空間に上品な華やかさと心地よい奥行きをもたらしてくれるでしょう。

 
 

2026.8.20

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