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TILE TREND COLUMN #43

琥珀の光とタージ・マハル

世界で最も美しい建築のひとつに数えられる、インドのタージ・マハル(Taj Mahal)。17世紀、ムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンが、愛妃ムムターズ・マハルを偲んで建てた白大理石の霊廟です。朝、昼、夕暮れ、そして月明かりの下で、白い大理石が光を受けて刻々と変わる表情──その計算し尽くされた美しさは、今も世界中の人々を魅了し続けています。


ユネスコ世界遺産(文化遺産)のタージ・マハル(Taj Mahal)外観

タージ・マハルを彩る白大理石の繊細な表情

注目が集まる、「タージ・マハル」と呼ばれる石

近年、建築・インテリアの分野で「タージ・マハル」と呼ばれる石に注目が集まっています。それは、インドの霊廟そのものではなく、ブラジルで採掘されるクォーツサイトで、キッチンカウンターをはじめとするラグジュアリーなインテリアの要素として人気を高めながら世界中の空間づくりに取り入れられています。クォーツサイト「タージ・マハル」は、やわらかなクリームやベージュのベースカラーに、ゴールドや温かみのあるグレーの脈模様がゆったりと流れる天然石です。遠目では穏やかで控えめに見え、近づくほどに鉱物の重なりが生む光を透過するような奥行きを感じることができます。その穏やかな色調と静謐な表情が、インドのタージ・マハル(Taj Mahal)を彷彿とさせることから、石材市場ではこの名で親しまれてきました。では、なぜ今、この石がトレンドとして注目されているのでしょうか。
 

トラバーチンから続く、温もりを求める時代

2010年代後半のインテリアでは、クールグレーや白を基調とした、スタイリッシュでミニマルな空間が人気を集めていました。その流れに変化が訪れたのは、2020年代の始まりとともに訪れたパンデミック以降です。家で過ごす時間が増えたことで、住まいに求められる価値は、シャープな見た目だけでなく、温もりや居心地のよさ、自然とのつながりへと移り変わっていきました。その変化を受けて注目を集めた素材のひとつがトラバーチンです。トラバーチンは、鉱泉などから沈殿・堆積して生まれる石灰岩の一種です。古代ローマのコロッセオにも使われた不朽の価値を誇る素材で、アイボリー、ベージュ、ウォームグレーといった深遠な大地を思わせる色合いと、多孔質が生む不規則な陰影が特徴です。自然が生み出した不完全さが、温もりを求め始めた時代に受け入れられていきました。2022〜2023年頃から海外のインテリアメディアやCERSAIE(チェルサイエ)でもトラバーチンの再評価が際立つようになり、“トラバーチンの復活”ともいえる流れが生まれていきます。そして、その流れを引き継ぎながら、さらに洗練された表情として近年注目を集めているのが、クォーツサイト「タージ・マハル」です。


イタリア・ローマにある古代ローマを代表する円形闘技場「コロッセオ」

ファサードやアーチなど建物の主要な骨格部分にトラバーチンが用いられた

コロッセオで見られるトラバーチンの石肌

トラバーチンとクォーツサイト「タージ・マハル」は、どちらも温かみのあるクリーム・ベージュ系の色調を持つ天然石です。共通しているのは、空間に“大地を感じさせる温もり”をもたらしてくれること。しかし、素材としての特徴は大きく異なります。トラバーチンは、表面に細かな穴や空隙を持つ多孔質な石で、それが独特の風合いや自然な表情を生み出しています。一方で水や油を吸いやすく、キッチンや水まわりではシミになりやすいという面もあります。そのため、使用場所によっては定期的な表面保護やメンテナンスが必要になります。クォーツサイト「タージ・マハル」は、美しさだけでなくクォーツサイト(珪岩)という素材ならではの強さを備えています。主成分である石英が再結晶化しているため、硬く、傷や摩耗に強い素材として知られています。大理石のような優美な表情を持ちながら、天然石の中でも高い耐久性を備えていることが、クォーツサイト「タージ・マハル」の大きな魅力です。適切な保護処理やメンテナンスを行うことで、キッチンカウンターやバスルームなど水や熱にふれる場所にも使いやすい素材として支持されています。
 

“ウォームニュートラル”というトレンドカラー

もうひとつ、この石が注目されている背景として見逃せないのが、インテリアカラーの傾向です。2020年代以降のインテリアカラーの大きな流れのひとつに、“ウォームニュートラル”があります。ホワイトでもグレーでもなく、ほんのりと温かみを帯びた中間色のクリームホワイト、ベージュ、トープ、サンドベージュ──これらの色は特定のスタイルに縛られず、どんな空間にも心地よい落ち着きをもたらします。クォーツサイト「タージ・マハル」の色調は、まさにこのウォームニュートラルと調和します。天然石が本来持つやわらかな色合いと、時代が求める穏やかなトーン。そのふたつが自然に響き合っていることも、この石が広く受け入れられている理由といえるでしょう。ウォームニュートラルの空間は、木材、真鍮、リネンといった素材とも相性がよく、北欧モダンやジャパンディなど現代のインテリアスタイルにも美しく溶け込みます。


クォーツサイト「タージ・マハル」の天然石スラブ

天然石には、本物ならではの重厚感や美しさがある一方で、実際の空間に取り入れる際には、いくつかの現実的な課題があることも確かです。天然石スラブは重く、大きく、加工や施工には専門的な技術が必要になります。コストも高くなりやすく、広い面積に使う際は、色柄の個体差が全体の統一感に影響することがあります。また、天然素材ならではの揺らぎは大きな魅力である反面、仕上がりが想像と少し異なるというリスクも伴います。そこで大きな役割を果たすのが現代の大判タイルです。デジタルプリント技術と製造技術の進化により、天然石の脈模様や光沢感、表面の微細な凹凸まで、驚くほどの精緻な表現が可能になりました。磁器質タイルは吸水率が非常に低く、耐久性や防汚性にも優れています。さらに、大判タイルでは目地を比較的少なくできるため、天然石スラブのような伸びやかさを持つ、シームレスな空間表現を可能にします。天然石の持つ真の美しさを、より扱いやすく、より現代の暮らしに取り入れやすいかたちで叶える──それこそが、今日の大判タイルが持つ大きな価値です。


カラー2830H(2800×1200角・1200角 受注輸入形状)

琥珀の光が宿るタイル
ルーチェダンブラ / Luce d'ambra  NEW

前述したトレンド傾向の中で、クォーツサイト「タージ・マハル」からインスピレーションを得て生まれたコレクション、当社新商品「ルーチェダンブラ」をご紹介します。このコレクションは、素材が持つ透明感のある美しさと圧倒的な存在感にフォーカスし、細部まで表現を探求することで生まれました。幾重にも重なる鉱物の堆積を彷彿とさせる色彩の移ろい、そして静かに流れる脈模様。その一枚には、自然が育んだ芸術的な気品が宿っています。「ルーチェダンブラ(Luce d'ambra)」は、イタリア語で「琥珀(=Ambra)の光(=Luce)」を意味します。琥珀は、太古の樹液が地中で長い歳月をかけて固化した有機宝石です。光を受けると、内側から発光するような黄金色の輝きを放ち、その内部には古代の時間が封じ込められているような神秘的な美しさがあります。琥珀のようなアンバー調の温かい色合いと、光の反射によって生まれる上品な表情にちなんで、「ルーチェダンブラ」と名付けられました。
「ルーチェダンブラ」は4色のカラー展開で、それぞれのカラーには「ヤムナー(Yamuna)」という名が添えられています。ヤムナーとは、インド北部を流れる全長約1,370kmの川で、ガンジス川水系を代表する主要な支流のひとつです。インドのヤムナー川のほとりに佇むタージ・マハル(Taj Mahal)のやわらかな光の移ろい──その情緒的な光景を「ルーチェダンブラ」の4つの色彩に重ねました。


タージ・マハルのほとりを流れる夕暮れのヤムナー川

Color 2010 / 2210P / 2310G / 2710P / 2810H
Rice Yamuna|ライス ヤムナー

月光のように清澄な、最も明るいトーン。タージ・マハルの静謐な白大理石を思わせる、やわらかく澄んだホワイトです。光が差し込む開放的な空間で、その繊細さが一層際立ちます。


壁:カラー2810H(2800×1200角 受注輸入形状)

Color 2020 / 2220P / 2320G / 2720P / 2820H
Honey Yamuna|ハニー ヤムナー

陽光を帯びた、やわらかなクリーム系のトーン。夕暮れ時のヤムナー川が金色に染まる光景を思わせる、温かみのあるカラーです。ナチュラルウッドや真鍮のアクセントとも調和し、上質で穏やかな空間をつくります。


壁:カラー2820H(2800×1200角 受注輸入形状)

Color 2030 / 2230P / 2330G / 2730P / 2830H
Opal Yamuna|オパール ヤムナー

ベージュとグレーがやわらかく混ざり合った、奥行きのあるリッチなトーン。「琥珀の光」という名に最も近い、深さと温かみを持つカラーです。モダンな空間にもクラシックな空間にも調和し、端正な気品をもたらします。


床:CMI-AC2830H  壁:カラー2830H(2800×1200角 受注輸入形状) 

洗面:カラー2730P

Color 2040 / 2240P / 2340G / 2740P / 2840H
Moka Yamuna|モカ ヤムナー

深みのあるブラウン系のトーン。大地の温もりを感じさせる、存在感のある豊かな色調です。ダークウッドやレザー、深みのある金属との組み合わせによって、重厚感のある空間を演出します。


床:カラー2840H(1200角 受注輸入形状) 

床:カラー2040(1200角 受注輸入形状) 

4種類の表面仕上げも、「ルーチェダンブラ」の大きな魅力です。平と粗目は、石の表情を自然に引き出すベーシックな仕上げで、屋内から屋外まで面状違いでつなげることで空間に一体感を持たせることができます。磨きは、光を取り込み脈模様を鮮やかに際立たせる仕上げです。水まわりのアクセントや、光の反射を活かす壁面に映え、空間に華やかさをもたらします。水磨きは、近年注目されている仕上げのひとつです。磨きよりも控えめな光沢で、シルクのようになめらかな、“触れてみたくなる”質感が特徴です。石の脈模様や色の深みをさりげなく引き出し、光の角度によって穏やかに表情を変化させます。
それぞれの仕上げが、同じ色柄の中に異なる光の表情を重ね、空間に合わせた多彩なコーディネートを可能にします。

トラバーチンのリバイバルから、クォーツサイト「タージ・マハル」へ。
近年の素材トレンドの変遷には、自然が生み出した色や模様を空間に取り入れたいという背景が感じられます。2026年の空間づくりにおいても、キーワードのひとつになるのは“温もり”です。トラバーチンで培われた「自然素材の個性を愛でる」という感性がより深まり、単なる模様ではなく、石の成り立ちや希少性に価値を見出す「本物至高」の流れへ。静かな品格と心地よさをまとった「ルーチェダンブラ」は、これからのウォームニュートラルな空間づくりにふさわしい一枚といえるでしょう。

 
 

2026.5.13

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