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TILE TREND COLUMN #40

Tuscan Dusk──光と時間がつくる、質感の多層性

前回のコラムvol.39では、Tuscan Dusk(タスカンダスク)という色彩の傾向を、「センシコローレ」と「ルミシチリア」の2つのコレクションを通じてご紹介しました。2025年のCERSAIE(チェルサイエ)を振り返ると、その豊かな色彩とともに、もうひとつ見逃せない大きな潮流がありました。それは、タイルの表面そのものが持つ表情の進化です。これまでタイルは、「表面を仕上げる素材」という、いわば機能的な面材として捉えられることが一般的でした。しかし現在では、空間全体のたたずまいや空気感を創造する、より本質的な要素として注目されています。単に色や柄が移り変わっているのではなく、素材そのものが持つ表情や質感の深さへ関心が高まっている印象でした。実際に会場では、フラットなタイルだけでなく、グロス(光沢)とマットが一枚の中で繊細に組み合わされたものや、凹凸によって陰影を生み出すタイルが数多く見られました。これは単なる意匠の変化ではなく、タイルの設計領域が「色や柄」から「表情や質感」へと拡張していることを示しています。

グロス(光沢)とマット──再評価される質感のコントラスト

近年のSalone del Mobile(ミラノサローネ)では、グロス(光沢)とマットという異なる質感の関係性へも関心が高まっています。長らくインテリアの主流だったのは、静けさと落ち着きを感じさせるマットな質感でした。しかし近年、そこにグロス(光沢)が洗練さをもって取り入れられ、空間の中で重要な役割を担い始めています。ここで重要なのは、単に“グロス(光沢)が復活した”ということではありません。グロス(光沢)とマットが別々に存在するのではなく、ひとつの空間あるいはひとつの素材の中でデザインされ、互いを引き立て合う関係へと変化している点にあります。艶やかなグロス(光沢)と、やわらかく光を吸収するマット──そのコントラストが、空間に奥行きとリズムをもたらします。この流れはタイルの領域においても顕著であり、単一の仕上げではなく複数の質感を重ねることで、より豊かな表現を生み出す方向へと進んでいます。
さらに、立体的な面状の進化も重要な要素です。特に、近年増加している縦リブの意匠は、単なる装飾から光をコントロールする設計要素へと変化しています。ピッチや高さを繊細にコントロールすることで、光は単調に繰り返されるのではなく、やわらかく揺らぎながら空間に広がっていきます。


MCA-F9020・F9060

リマーリア / Rimalia NEW

こうしたトレンド傾向の中で、2026年の新商品「リマーリア」は非常に象徴的な存在です。「リマーリア」は、グロス(光沢)とマットの融合、立体的な凹凸面状、そしてTuscan Dusk(タスカンダスク)のカラーバリエーションを併せ持つことで、「質感・凹凸・色」という3つのトレンドを同時に体現した、2026年注目のコレクションです。光を反射するグロス(光沢)と、光をやわらかく吸収するマットという対極にあるふたつの性質を一枚の中に落とし込むことで、時間帯や見る角度によって異なる印象を生み出します。この表情を支えているのが、凹部に施された釉薬技術です。釉薬の溶け具合によって一枚ごとにわずかな表情の差が生まれ、均質でありながらも単調ではない、「リマーリア」ならではの奥行きある表情をつくり出しています。


MCA-F9010

MCA-F9070

また、「リマーリア」の魅力を語るうえで欠かせないのが、240×60mm角というブリックフォーマットです。この細長い形状は、視線の流れを促す要素として機能します。人の視線は、長い方向に沿って自然に導かれる傾向があるため、縦方向に配置すれば視線は上へと伸び、空間に高さを印象付けます。一方、横方向に配置すれば、視線は水平に導かれ広がりを感じさせる表現へとつながります。つまり、同じタイルであっても、張る方向によって空間プロポーションの印象を調整できる点が大きな魅力といえます。


縦方向の配置例(MCA-F9030・F9080

横方向の配置例(MCA-F9040・F9090

さらに、この形状は壁面に連続的なリズムを生み出します。正方形タイルが静的で安定感のある印象を与える一方で、ブリックフォーマットは動きのある表情を生み、空間に軽やかな流れをもたらします。240×60mm角というサイズ感にも意味があります。それは「人が片手で掴めるかどうか」という実用性からくるレンガのスケール感に起因し、人が長く親しんできた素材の記憶を想起させます。そうした“人間的なスケール”が、温もりや親しみを添えてくれます。色彩もまた、「リマーリア」の印象を決定づける重要な要素です。自然界から着想を得た全10色のラインナップは、鮮やかさと落ち着きをあわせ持ち、空間に個性をもたらします。なかでも、ベージュやキャラメル、セージグリーン、ダスティブルーといったTuscan Dusk(タスカンダスク)を彷彿とさせるカラーバリエーションは、質感や凹凸と響き合うことで、単なる色彩表現にとどまらず、光と時間の移ろいを感じさせる空間体験へと昇華します。

MCA-F9000 / BRINA


MCA-F9010 / BURRO

MCA-F9020 / MANDORLA

MCA-F9030 / CARAMELLO

MCA-F9040 / PIUMA

MCA-F9050 / TORTORA

MCA-F9060 / POSIDONIA

MCA-F9070 / INDIGO

MCA-F9080 / AMANITA

MCA-F9090 / TARTUFO

オプスセクティーレ / Opus Sectile NEW

一方、新商品「オプスセクティーレ」は時間というテーマをより直接的に表現したコレクションで、古代から中世ローマで発展した大理石の象嵌技法「Opus Sectile(オプス・セクティレ)」を、一枚のタイルという新しいかたちで再解釈しています。ラテン語で「切り出された石の作品」を意味するこの技法は、異なる色や質感を持つ大理石を幾何学的な形に切り出し、壁や床に組み込むことで構成されます。例えば、ローマ近郊のオスティア・アンティカ遺跡に残る「Domus del Ninfeo(ニンフェウムの家)」では、多色の大理石を幾何学的に組み合わせた美しい「Opus Sectile(オプス・セクティレ)」が見られます。異なる石材の境界に生まれるわずかな溝、経年の中で表れた石種による艶の対比、そして光の角度によって穏やかに変化する陰影。整然とした幾何学の美しさの中に、素材ごとの個性と経年の痕跡が共存している点こそ「Opus Sectile(オプス・セクティレ)」が今なお人を惹きつける理由なのかもしれません。

ローマ近郊オスティア・アンティカ遺跡にある「Domus del Ninfeo(ニンフェウムの家)」

「オプスセクティーレ」は、こうした大理石同士を組み合わせた際に生まれる繊細な溝ややわらかな光沢感を、最新の3Dテクノロジーで忠実に再現し、長い年月を経た遺跡のような深淵さを表現しています。単一の質感ではなく、複数の質感が重なり合うことで生まれる表情は、現代のタイルトレンドとも強く呼応しています。なかでもセージグリーンの「ABI-AC6510H」は、Tuscan Dusk(タスカンダスク)を思わせる色彩と響き合い、現代的でありながら歴史的な趣を感じさせます。その相反する魅力こそが、「オプスセクティーレ」が持つ創造性だといえるでしょう。


ABI-AC6510H

ABI-AC6530H

ABI-AC6550H

ABI-AC6520H

ABI-AC6510H

ABI-AC6520H

ABI-AC6530H

ABI-AC6540H

ABI-AC6550H

ABI-AC6560H

「リマーリア」と「オプセクティーレ」。この2つのコレクションに共通するのは、表面の奥に幾層もの表情を秘めた「質感の多層性」です。光を反射し、繊細な陰影によって刻一刻と表情を変える「リマーリア」。そして、現代的な感性に古代遺跡の深淵さを重ね合わせ、時の流れを封じ込めた「オプセクティーレ」。多様化する価値観に寄り添い、より豊かな表現力を求めて。タイル一枚から始まる、デザインの進化はこれからも続いていきます。

 
 

2026.4.14

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