HOME | Design award | 第10回 DA2025受賞作品(非住宅)
 

WINNER 2025

非住宅部門

金 賞

 
n’estate Kyoto-Arashiyama
株式会社SNARK

企画・開発 三井不動産レジデンシャル プロジェクトマネジメント GOOD PLACE 金子博宜 松本恵理子
設計 株式会社SNARK 山田優 嶋貫真子 施工 株式会社ヴィーコ 坂本直樹 太田貴之 撮影 志摩大輔

風景に呼応するタイル
京都嵐山に四半世紀以上前に建てられた古民家を一棟貸しの民泊とカフェにリノベーションした。タイルが風景と空間を結ぶ存在となるよう配置。カウンターやベンチ、縁側にタイルを用い、素材の質感が光の反射により内と外の空間に奥行きを与える。新旧の対比を強調するのではなく、馴染ませながら引き立て合うように、風景の一部としてタイルがそっと佇む構成を目指した。古民家の柱やラワンの風合いと呼応しながら、季節の移ろいとともに空間に微細な陰影を与え、風景との関係を穏やかに繋ぐ。

古民家を一棟貸しの民泊とカフェへと再生し、カウンターやベンチ、縁側にタイルを配することで新旧の質感を調和させている。木構造や庭との関係を大切にしながら、タイルがもたらす均整と清潔感が現代性を加え、利用者に心地よい滞在体験を提供する。単なる保存ではなく、生活に根差した新たな価値を宿すリノベーションとして、地域文化を継承しつつ未来へつなぐ意義が高く評価できる。(谷尻誠氏)

銀 賞

 
Gigio
株式会社ROS STUDIO

設計 株式会社ROS STUDIO 施工 株式会社SET UP 照明設計 hmmm ファブリック LOSKA

トスカーナの現地追求型店舗
松陰神社前駅からほど近い場所に位置するイタリアンレストランの計画。ファサードを二面開口とし、エントランスを意図的に主導線に対して奥の配置とすることで、来店客が店内の賑わいを垣間見ながら内外の境界を穏やかに越境していく体験を設計。ドアを開けた瞬間、一気に高揚感を感じさせる活気あるオープンキッチンがお客様を出迎える。正面の壁に採用した深いブラウンのタイルがスタッフの動きや外光を穏やかに反射し、空間全体に賑やかさを生む。オーナー夫妻が研鑽を積んだトスカーナ地方の風景を着想源とし、テラコッタタイルや石壁を想起させる左官を取り入れ、素材の温度感と空間の厚みを演出した。一方で、ディテールにおいてはモダンかつストイックな要素を徹底し、地域性と都市性のバランスを意識した設計としている。

東京都世田谷区に位置する、トスカーナ料理を出す人気レストランである。店内に入って眼の前に見える壁面に、少しレトロで温かみのある赤茶色のタイル「ひだS」が張られている。この壁面が、客に「このお店は、美味しそうだ」と直感的に感じさせるだろう。更に、カウンター内で働く料理人の背景として、壁面タイルが人物を魅力的に見せている。床面では、「オストゥーニ」「クレテコッタ」を張り分けることで、アクティブなカウンターエリアと落ち着いたテーブル席のエリアに、さり気なく性格分けしている。(塩田健一氏)

銅 賞

 
FUNAYA藏
株式会社U設計室

設計 株式会社U設計室 施工 花満建設株式会社 撮影 貝出翔太郎

海に浮かぶような「伊根の舟屋」を改修した宿
重要伝統建築物として認定されている、伊根の舟屋をリノベーションした1棟貸しの宿。山と海に挟まれたこの集落には娯楽施設やコンビニもなく、街灯も少ない静かな住宅地である。宿泊者は周辺の散策か建物の内部でゆったり過ごす時間が多くなるため、滞在時間の豊かさを追求した計画とした。伊根の集落は道路を境に山側に母屋(生活拠点)海側に蔵と舟屋(生業)という配置になっており、建物の間や舟屋の隙間に切り取られた海が見える。〈FUNAYA 藏〉もそういった暗い室内を介して海に視線が抜けるような空間を目指した。本計画に置いてタイルは1日の光や海の色を可視化する役目を果たしている。

重要伝統建築物として知られる伊根の舟屋の構成を活かし、海から通りまでを一直線につなげる空間構成を生み出しているデザインである。海から連続する部屋の床に、光を柔らかく反射する黒いスレート調タイルを使い、側面の壁には緑がかった色調の素材を使うことによって、青緑色の海の光が、内部の床と壁に反射しながら奥へと引き込まれているところが大変魅力的であり、銅賞として選ばれた。(大西麻貴氏)

入賞・環境空間賞(特別賞)

 
DIVERS
株式会社日建設計

設計 株式会社日建設計 山上直哉 撮影 ©FUMITO SUZUKI

床タイル目地空調による居住環境と意匠性の両立
NGK(日本ガイシ)が外部と協働することを目的に、理念・ビジョンを共有するオープンイノベーションの活動拠点。吹抜を中心に3階まで続く1筆書きの回遊動線とし、社内外の交流促進を高めた。吹抜部は床タイル目地からの吹出し空調とし、居住域空調を行うことで居住環境を高めながら意匠性にも配慮した。また、2階以上の通路床・天井・下がり壁等の内装材に天然木材を使用し、バイオフィリックデザインを積極的に取り入れることでウェルネス向上を図った。 特徴的な曲面のファサードは東面:斜めルーバー、南面:30°傾斜ガラスを用いて各方位の太陽高度に合わせたファサードとすることで、空調負荷を低減しnet-ZEBを達成した。

D-Hub・1階通路床/「モンティニャック」CTC-X7130
D-Field・外部庇下/「モンティニャック」CTC-X7170
D-Field/「レイズドフロアー・システム」AD-3特注品
トイレ壁床/「ノール」OR-U3420

タイルに目地があるという特性を活かし、タイル目地空調という床吹き出し型の空調方式を開発し、快適な居住域空間を、美しいデザインとともに生み出しているところが素晴らしいと感じた。空調の吹き出し口を最も目立たない形でおさめることで、空間デザイン全体の立体性や抽象性を存分に感じることができる。タイルであるからこそ実現できる実験的な空間であり、今後他プロジェクトにも展開可能な普遍性を持ったアイデアであることから、入賞かつ環境空間賞という二つの賞を差し上げることとなった。(大西麻貴氏)

入 賞

 
NOT A HOTEL FUKUOKA
axonometric+NKS2 architects・乃村工藝社A.N.D.

意匠設計 axonometric+NKS2 architects インテリアデザイン 乃村工藝社A.N.D.
構造設計 荒木美香構造設計事務所(現 Graph Studio) 設備設計 シード設計社
監修 IMD Alliance+オレンジ・アンド・パートナーズ 建築施工 松山建設
内装施工 長崎船舶装備 植栽 DESIGN NETWORK ASSOCIATES 照明 ModuleX

都市とインテリアをシームレスにつなぐ
都市とインテリアの間に豊かな植栽帯と屋外テラスを介在させた都市型ホテルの計画。8室の客室に付属するテラスと植栽帯はすべて異なる平面形状と設備を有し、サウナや水風呂、ジャグジー、BBQテラスなど、客室ごとに多様な過ごし方を可能にしている。この豊かな屋外を活用してもらうためにも、内外空間の体験をシームレスに接続することが重要であった。そこで、名古屋モザイクのタイルを、インテリアからテラスの床・壁へと連続的に使用している。タイルの素材感と耐候性を活かし、屋外でありながら室内のように、室内でありながら屋外のように感じられる空間を目指した。都市生活における自由で柔軟な体験・空間のあり方を模索した。

テラス床/「モンティニャック」CTC-X7160「フレンチオーク」CTC-O1120G
客室床/「リトロバータ」LEP-X8230M
客室壁床/「モンティニャック」CTC-X7220FX7160
ラウンジ壁床/「モンティニャック」CTC-X7110
ラウンジ暖炉壁/「クロジョーロ」MRZ-F7010

内外をシームレスにつなぐタイルの用い方が特徴的である。マテリアルの連続性が屋内外の境界を曖昧にし、都市にいながら自然や外部環境との一体感を享受できる。暖炉や植栽と調和するタイルの質感は、くつろぎと高揚を同時に生み出し、日常と非日常を行き来するような体験を提供する。素材の選択を空間構成の核心に据え、滞在の心地よさを提示する点に、好感が持てる。(谷尻誠氏)

入 賞

 
GREENITY IWATA
株式会社竹下一級建築士事務所

設計 株式会社竹下一級建築士事務所 撮影 髙橋菜生

GRAND COMMUNITY HOTEL
今まで地域に愛されてきたグランドホテルのこれから先を見据えて、新しい魅力と価値を持つ新しいホテルのマスタープランを策定すべく、コンセプトを「GRAND COMMUNITY HOTEL」と掲げた。地域のシンボルとして、地域や人を豊かにするために、ホテルを“非日常”として外の世界と切り離して考えるのではなく、日常的により地域に開き、社会・自然・人と繋がり、ホテルが大きなコミュニティの一部として地域全体を巻き込みながら、ともに豊かに発展していく存在を目指す。このマスタープランの下、建築コンセプトを「丘に吹く 風の建築」とし、ここにつくられるホテルが新しい時代に新しい風を吹かせたいと想いを込めている。

エントランス床/「ムーンストン」CFC-X1010
洗面室壁/「コルメナ」COL-23458=89:5:2:2:2% ミックス
商談室壁/「クロジョーロ」MRZ-F7020
商談室床/「ファーレンハイト」FIA-X0630

静岡県磐田市に新築でつくられたホテルである。「自然を取り込むこと」「旅行者への非日常性」「地域コミュニティーの人達が使える日常性」をバランス良く融合したホテルだ。温泉と言えば、建材としては「石」が連想されるが、そのイメージを裏切ることなく、温泉フロアの待合スペースには、石のオブジェを置くとともに、床面に「ムーンストン」を張っている。また、洗面室の曲面壁には、複数色の六角形モザイクタイル「コルメナ」を張り、自然の風景のような抽象的なグラフィックを生み出している。これは、防汚性と清掃性も担保しているだろう。商談室の壁面に張られたグリーンのタイルは、ホテル名「GREENITY」を体現している。(塩田健一氏)

外壁大判タイル賞(特別賞)

 
GINZA M TOWER
株式会社JR東日本建築設計

(4枚目) 改修前の建物/撮影 戸田建設株式会社 東京支店

伝統と上品さをもつファサード
銀座に建つ総合宝石メーカー本社ビル(一部テナントビル)の改装。昭和39年に竣工したビルの既存躯体を残し、長らく銀座の街並みを形成してきたビルの新たな外装材として特注リブ形状のテラコッタタイルを採用。南東面(西五番街通り)はグリッドフレームを強調したデザイン、北東面(みゆき通り)は細かいリブのタイルを組み合わせた壁面を強調するデザインとし面ごとの表情に変化を持たせ、既存構造躯体に合わせながら銀座の街並みに溶け込む外装デザインとした。艶消し釉薬による手造りの風合いを持つタイルにより、宝石メーカーのクラフトマンシップ、「伝統」と「革新」を建物で表現した。太陽光を受けたリブに繊細な陰影が浮かび上がる。

外壁/「特注テラコッタタイル」

特注テラコッタタイルを用いた外装改修により、銀座の街並みに新たな表情を与えている。均整の取れたグリッド構成は都市の記憶を受け継ぎながら、素材の温かみが重層的な時間の積層を感じさせる。伝統的工法と現代的デザインが響き合い、街に馴染みながらも確かな存在感を放つ点に、この建築の「伝統と革新」のテーマが鮮やかに体現されている。(谷尻誠氏)

ストーリー賞(特別賞)

 
尾洲病院付属歯科クリニック
株式会社アーキサイエ建築設計事務所

設計 株式会社アーキサイエ建築設計事務所 中川奈々 施工 株式会社チェックハウス

思いをあてる
「布をあててタイル作れますよ」名古屋モザイク工業の営業担当者からの一言から始まったタイル作り。繊維のまち尾州に構える歯科クリニック。その地で織られた布を建築に取り込みたいと迷中入りしていた時でした。木玉織物さんのガラ紡から糸が紡がれ、布として織られる。その布をタイル製造工場に持ち込み手仕事で粘土にあててもらう。そしてタイルは柔らかな光を放ち一枚一枚が異なるアート作品のように出来上がった。最後は左官屋さんの親子が斜子織りで布を織っていくように一枚一枚丁寧に張り上げてくださった。地域のものづくりを愛する人々のリレーで出来上がった歯科医院が地域に住まう人々に愛されて続けていくことを願ってやまない。

特注品

繊維のまち尾州の文化を建築に取り入れるために、布を押し付けて模様をつけた、特別なタイルをデザインし建築デザインのアクセントとして使ったところが魅力的であった。特注されたタイルは、一枚一枚表情に違いがあり手仕事のあたたかさを感じられる。タイルという素材には、材料、テクスチュア、釉薬、張り方など、その工程のさまざまな段階で地域の物語を引き受けられる懐の深さがあるのだということを感じさせられる提案であり、ストーリー賞という新たな賞の名前を作り、差し上げることとなった。(大西麻貴氏)

商店建築賞(特別賞)

 
cococuru bagel
株式会社F.S.DESIGN

住宅街に溶け込むベーグル店
住宅街の角地にあるベーグル店。ベーグルを引き立たせながら背景の組子との色彩バランスで「カイエン KAI-2-120」を選択。カウンターの前角に90°標準曲がりを縦使いし、50の目地の場所にガラスショーケースのガラスをもってきて目地をシールの受け場としながらガラスショーケースカウンターの奥行での一体感を考えました。

住宅街にあるベーグル店である。荒々しいザラつき感を持つタイル「カイエン」がカウンター全体を覆っている。タイルのテクスチュアや色むらが、クラフト感を生み出しており、客に「ベーグルも丁寧に手作りされていそうだ」と感じさせるだろう。同時に、タイルが清潔感も感じさせる。ガラスショーケースも、タイルの寸法に合わせて丁寧に設置されている。天井や組子壁面の軽やかさに対して、カウンターに強い求心力や重厚感を持たせており、タイルの魅力が店の雰囲気づくりを牽引している点にも感銘を受けた。(塩田健一氏)

パブリック賞(特別賞)

 
大阪上本町駅
株式会社大林組一級建築士事務所

撮影 大日フォトスタジオ 山川高弘

視認性と空間性を両立する、柔らかな表情のアイストップ壁
駅の連絡通路新設計画。通路内WCのアイストップ壁には、ピクトサインと同系色の菱形タイルを採用し、利用者が各WCの用途を一目で識別できるよう配慮。低彩度のムラ感のあるタイルを使用することで、通路に対し柔らかな表情を生み出した。またヘリンボーン柄に張ったタイルを活かして矢羽根型のサインを組み込むことで、通路からWC入口へと誘導するデザインとしている。WC内部にはテクスチャーの異なる4種類のタイルを採用し、温かみのある空間を演出した。約15mまっすぐに伸びる連絡通路の床にはベージュ調のタイルを馬張りに配置し空間にリズムを付け、WC内は暗い色のタイルに切り替えることで空間構成と耐汚性に配慮した。

入り口壁/「マテリアプリマ」SEC-Z1500・Z1520・Z1560
入り口床/「ノール」OR-X3410
手洗い壁/「ひだS」HSN-1140S1152S1221S1414S
手洗い床/「ネイチャーⅡ」MSY-R3050

公共空間のトイレをいかに快適につくるか。これは、現代の空間設計における一つの重要なテーマである。このトイレでは、アイストップとなる壁面全体に菱形タイル「マテリアプリマ」が張られており、それが「男性用」「女性用」「多目的」を表現し、壁面自体がサインの役割を果たしている。ムラのある穏やかなタイルの色彩も魅力的だ。ひと目でトイレであることが認識できるが、かといって、「いかにもトイレである」という印象を与えない。そうした絶妙な匙加減に感銘を受けた。また、エントランス床には「ノール」を張り、街路のような雰囲気にし、トイレ内の床には「ネイチャーⅡ」を、壁面には「ひだS」を張り、上質感、落ち着き、清潔感を手堅く生み出している。(塩田健一氏)

タイル×アート賞(特別賞)

 
特定非営利活動法人 子ども支援ホーム
学童保育 じゃんぷ 千僧クラブ
tile memo

デザイン・モザイクアート制作 tile memo AKEMI

蝶と魚の対話 - ガラスの破片から生まれる美しい未来
本作品は、不要となったガラスタイル廃材を用いモザイクアートへと再生しました。アート制作でカットした後のタイル片を花弁や波に使用しています。1mm以下のクラッシュガラスは魚の後ろにミラーを配置し、魚の周りや波部分の水を表現しています。羽内を泳ぐ二匹の魚は、蝶とは異なる世界を生きる存在が融合し、調和する様子を象徴し、児童館の子どもたちの多様性と協調性を示します。タイルの多様性と創意工夫により、子どもたちの未来への可能性を広げる作品です。

シエルグラス 多品番使用/SEL-20-3239106111209 他

ペイントで描く絵とは異なり、タイルで描かれた絵は、立体的で物質的である。発色も鮮やかだ。つまりそれは、絵画と彫刻のハイブリッドのような存在と言える。この作品も、そうしたタイルアートならではの魅力を感じさせる。この作品は、ガラスタイルの廃材をアートに昇華している。「子ども支援ホーム」「学童保育」の施設に設置されていることから、「多様性」を表現しようとしている。遠くから見ても近くで見ても、楽しめそうだ。そして、制作にかけられた、人間のエネルギーを感じられる点も魅力的だ。(塩田健一氏)

過去の開催情報

第9回

Design Award 2024

第8回

Design Award 2023

第7回

Design Award 2022

第6回

Design Award 2021

第5回

Design Award 2020

第4回

Design Award 2019

第3回

Design Award 2018

第2回

Design Award 2017

第1回

Design Award 2015