大宮ソラミチKOZ
KAJIMA DESIGN
設計 KAJIMA DESIGN 佐藤建 撮影 エスエス 走出直道
空の翳 - 光に追随する艶やかなホールの壁
テナントオフィスのエントランスホールに特注の白色セラミックルーバーを採用した。このセラミックのルーバーがシンプルな形状の空間を変化に富んだものとしている。時間や天候により変化する外光を掬いとり、釉薬の艶が光を抽象化するその姿は、色鮮やかさはなくとも印象派の絵画を思わせる。セラミック表面の緩やかな曲率が照明の映り込みに歪みをもたらし、独特のパターンを作り出すことで、見る人の立ち位置によって異なる表情を見せている。
特注セラミックタイル
オフィスのエントランスホールに、わずかに湾曲した白い特注タイルを使うことで、印象的な空間を生み出している提案です。シンプルであるが故に、タイルが受ける光のうつろいや、形の視覚的効果を敏感に感じられるデザインとなっているところが魅力的でした。セラミックでありながらも金属のようにも見える質感や、空間における他素材とのバランス感覚等、その美しさが多くの審査員に評価され、金賞となりました。金型からつくる特注タイルの可能性が、今後さらに多くの事例で広がっていくことも期待したいです。(大西麻貴氏)
HOBA / TOSSO / OSCAR WILDE
SNARK Inc.
Design: Yu Yamada, Mami Umayahara / SNARK Inc. Client: TOYOKE Inc. Construction: butter Inc.
Steel products: gambit Acoustic design: WHITELIGHT.Ltd Logo design: Kohei Nakazawa / STUDIO PT.
Illustration: Quentin Chambry(HOBA), Chiaki Kobayashi(TOSSO), ancco(OSCAR WILDE)
Sign painting: Peter Liedberg / Tokyo Sign Co. Neon sign: TAKASHO DIGITEC Co,Ltd Photo: Ippei Shinzawa
カレー屋、ビストロ、ドーナツ屋の3業態を集めたプラントベースフードコンプレックス
2面あるファサードを活かし1方はドーナツ屋、もう1方は昼夜で入れ替わるカレー屋とビストロとして計画した。メインマテリアルにタイルとガラスを使用し、それぞれ色味や加工、施工方法を変えることで、別の店に見えるが統一感のあるデザインとしている。タイルは可能な限り真物で使用できるように各部の寸法を調整し、現場でのサイズカットを避け、排出される建材のゴミを抑えている。照明は無線調色調光システムで昼夜で入れ替わる店の雰囲気をカラー照明で切り替える演出を提案した。野菜を様々な調理法で調理し菜食料理の可能性を追求する店舗コンセプトにインスパイアされ、限定されたマテリアルを多様な表情に見せるデザインを目指した。
2つのファサードを持つ店舗区画に、カレー屋、ビストロ、ドーナツ屋という3つの業態が入っている。それらが一連の店であるということを、全面にタイルを用いて一体感を出すことによって表現している。と同時に、この店が複数の業態で構成されているということを、タイルの色味やテクスチュアの変化によって伝えている。柔らかいグリーンの色味は、今の時代のテイストを感じさせるが、同時に、「ひだS」というタイルはどこか懐かしい雰囲気を持っていて、そのバランスが良いと感じた。タイルの色味を、照明の調色調光システムで増幅している点も興味深い。(塩田健一氏)
木下医院
平野玲以建築設計事務所
設計 平野玲以建築設計事務所 撮影 小川重雄
地域のランドマークとなり、質の高い医療と空間で患者に愛される医院
飛鳥時代に都として栄えた桜井市は歴史や文化を感じられる遺跡・史跡が多く残り、多武峰とその背後に連なる紀伊山地の山並みは美しく、大和三山と合わせて人々の心に残る風景が広がっている。木下医院の建築はその風景へのオマージュとなる三つの峰を持つ山並みをイメージした軽やかな屋根が特徴的である。屋根を受ける外壁は対照的に割肌の天然石で重厚に仕上げ、質の高さと自然な表情で風景との調和を生み出している。待合室にも外壁と同じ石壁を配し、屋根の形をそのままにした山型の高い天井、妻側の大開口から見える美しい庭の風景によって包み込まれる空間は、診察を待つ患者に心の安らぎをもたらしている。
壁/天然石タイル(特注品)
本来、クリニック特有の緊張感が漂う環境で、広範囲にタイル状の天然石を使用することであたかも住宅のようなリラックスできる環境を作り出している点が評価の対象となった。また内外ともに同材で作られた空間は、より連続性の強い空間となっていた。用途に縛られない設計者の自由な発想は、業界においてとても大切なメッセージなのではないかと受け止めた。(谷尻誠氏)
BAINCOUTURE Osaka Showroom
株式会社 DRiP
施主 BAINCOUTURE(ニッコー株式会社) 設計 株式会社DRiP 施工 有限会社アイ・エム
カーテンデザイン 株式会社ファブリックスケープ 照明計画 株式会社ニューライトポタリー
植栽 株式会社IRODORIMIDORI 撮影 河田弘樹
More than bathroom. More than showroom.
オーダーメイドのユニットバスのショールーム。バスルームでは人は全裸になり湯に身を委ねます。無防備であるが為に光や風、音といった自然現象に対する感度が高まります。人も自然の一部であることに気づき、やすらぎを覚えます。単に身体を洗うという行為以上の体験がそこにあり、ブランドが大切にしている哲学をこの空間に込めました。このプロジェクトでは、ユニットバス製造時に余剰となったタイルを再利用し、テラゾーテーブルに転用。また、クライアントの別事業である食器の原材料のロスを練り込んだ左官壁を創るなど、通常廃棄されるものを再利用し、環境負荷の削減と共に新たな創造性を育みました。
ホール床/「アルドワーズ」RX-Y3920
浴室・洗面室/「アルドワーズ」RX-Y3820・Y3920
テラゾーテーブル/アルドワーズや他部使用の余剰タイルを使用
ユニットバス製造時に余剰となったタイルを再利用し、柔らかい色合いの特別なテラゾーテーブルをつくったのが魅力的でした。タイルをそのまま楽しむことはもちろん、例え数量が揃わなくても魅力を伝える方法を見つけることで、例えば壊されてしまう建物のタイルを再利用するなど、さまざまな展開の可能性を想像できます。ショールームでこのテーブルと出会ったクライアントやデザイナーが、自身のプロジェクトのゴミの行方やその再利用に考えを巡らすきっかけにもなるかもしれません。(大西麻貴氏)
吉田屋
STUDIO MOUN
施工 長崎船舶装備株式会社 照明デザイン ModuleX 小山良平 撮影 鳥村鋼一
異なる加工を施したタイルを組み合わせ、日本の空間性を新たに表現する
温泉付き客室の改修計画。外部に面する半露天の浴室と隣り合わせ、かつ寝室からも見える場所に広縁を配置し、浴室と同じタイルを用いてひとつながりに仕上げることで、温泉付きの客室に宿泊していることを常に感じられるようにした。タイルは箇所ごとに加工方法を変え、出隅部分はヨド加工、突き付け部分は眠り目地、そして平場部分にはサンドブラスト加工を施して2本のラインを引いている。黒いタイルに覆われた広縁のコーナー部分は、吸い込まれるような永続性を感じさせ、そのぼんやりとした暗がりの中にスッとタイルの無垢なる姿が浮かび上がる。柔らかく線が通った嘘の無い日本の空間をタイルという素材を用いて新たに表現した。
建築を作るという行為によって、風景が顕在化している。そのために選ばれたタイルのサイズ、色の選定が秀逸であった点を評価した。空間を作るということは、同時に外の環境との関係をつくることであり、インテリアという概念が外部まで及ぶということを示しているこの提案は多くの設計の意識を変えることになるのではないだろうか。(谷尻誠氏)
nol hakone myojindai
株式会社日建設計
設計 株式会社日建設計 伊藤達則 伊藤愛 王笛 撮影 ad hoc 志摩大輔
A place to belong, just as you are. 自分をととのえるホテル
本ホテルは、会員制ホテル「東急ハーヴェストクラブ箱根明神平」を改装し、京都市中心街で営業中の「nol kyoto sanjo(2020年11月開業)」に続く「nol(ノル)」2店舗目として箱根でリブランドオープンした。「nol」は「Naturally(自分らしく、自然体で)」、「Ordinarily(普段通り、暮らすように過ごし)」、「Locally(その土地の日常に触れる)」をブランドコンセプトとしている。リゾートホテルとしてスチームサウナ等の充実の温浴施設を備えている。インテリアについては各所に曲線を用い、穏やかな色合いとした。周囲の景色を楽しみ、ゲストは「箱根ウェルネス」を体験できる。
客室水廻り/「シクラスⅡ」SIC-R2050・R2050F
サウナ/「クロイツ」KRE-016・116
プール槽/「ヴィンセント」VIC-05・08 2色ミックス
衣服を脱ぎ捨て、触覚が研ぎ澄まされるシチュエーションでは、タイルらしさを存分に味わえる空間が生まれると言えるでしょう。本プロジェクトは、リゾートホテルの温浴施設において、庭へと柔らかくつながる曲線デザインの中に、落ち着いた色合いのタイルが配置されています。穏やかでありつつも、サイズの異なるタイルを使うことで空間にリズム感が生まれるとともに、肌に触れる場所には小さなモザイクタイルを使うことで、触覚に訴えかけるデザインであるところが素晴らしいと感じました。(大西麻貴氏)
SORAE
株式会社 DRiP
設計 株式会社DRiP 施工 株式会社奥村組 撮影 ad hoc 志摩大輔
既存意匠を生かし、次の30年愛されるラウンジ&ダイニング
吉祥寺で30年以上愛されたホテルを改修し、エクセルホテル東急としてリブランド・オープンしました。SORAEは大きな吹き抜けを持つ、ホテルのラウンジ&ダイニングです。改修前の、パリの街並みを彷彿とさせる意匠を活かしつつ、現代的な印象を加え、様々な世代の方々に次の30年愛される施設を目指しました。空間のアクセントとして、モノトーンのタイルをデザイン張りし、現代的でシックでありながら、賑やかな印象を作りました。
ホテルのリブランディングと改修に伴い、ホテル内のダイニングがリニューアルされた。カウンターまわりの床に、まるでカーペットのようにタイルを張り、領域を作り出すという手法は、飲食店で時々見かける手法ではあるのだが、ここではそうしたオーソドックスな手法を、既存のややレトロな空間にうまく調和させている。使用したタイルには、白・黒・グレーを用いて、さらにエッジの部分にモザイクタイルを繊細に張ることで、現代的な色味とクラシカルな雰囲気を両立させている。「クロジョーロ」の表面には凹凸があり、光を乱反射する表情がクラフト感を漂わせ、飲食店にふさわしいと感じた。(塩田健一氏)
U-BASE CAMP BATH&SAUNA
emi tanaji
施主 ウエインズトヨタ神奈川株式会社 企画 株式会社電通ライブ・株式会社D-LINE
ディレクション 株式会社電通ライブ・ネジアーキテクツ アーティスト(施工) emi tanaji
施工サポート tilestyle深大寺 施工協力 株式会社泉宣宏社
生命の息吹
WEINS PARK 海老名にあるU-BASE CAMPの温浴施設。温浴場とサウナにアートを落とし込むことで画一的ではない、唯一無二の温浴施設を計画し、施設の温浴場の男女双方の壁面を手掛けました。片面はスプレーで描いたビックバン『生命の誕生』を表し、反対面にタイルとペンキで大自然『生命の息吹』を描きました。ウエインズパーク海老名では人々に“車の可能性”を提案しています。施設の一角にある温浴場では、何者にでもなれた少年少女時代「夢見る心」を意味した宇宙の湯と、その反対側にある「大地の湯」では、車で何処にでも行ける昨今、あの頃夢見た景色を探しに、また自分の好きな場所と壁画を重ね合わせ、豊かな暮らしや思い出へ馳せる想像を空間に込めました。タイルは材質や模様にこだわり、大地の表現に活かしました。
「クラッシュタイル」特注デザイン
「クラッシュタイル(レトロレリーフ)」特注品
多くの応募作品の中で、唯一タイルの使い方の独自性があった点を評価した。材料という使用方法が自然と導かれているものを、根本から見直して表現として使用しているこの提案は、今後もタイルの使用方法がより拡張されていくきっかけとなるのではないだろうか。(谷尻誠氏)
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