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TILE TREND COLUMN #37

触覚で選ぶ、これからのタイル|細溝という表現

触れたくなる壁が増えている

2025年のCERSAIE(チェルサイエ)を訪れた多くの人が、共通して体験したことがあります。それは、展示されている壁に思わず手を伸ばしてしまうという感覚でした。会場の至るところで目にしたのは、フラットな面に加えて、表面に繊細な溝や起伏をもたせたタイルです。溝が光を受けることで生まれる陰影は見る角度や距離によって表情を変え、壁面そのものの印象を刻々と変化させます。2024年頃から増え始めた細い溝状の面状は、2025年にさらに進化を遂げ、単に溝が刻まれているだけではない、立体感や奥行きにニュアンスをもたせた表現へと進化していました。


細溝のイメージ

近年のインテリアや建築では、美しいだけでなく “どのように感じられるか” が重要なテーマになっています。視覚だけに頼らず、触覚や音、温度感といった五感全体で空間を捉える考え方は、デジタル化が進み画面越しの体験が増えた現代だからこそ、より強く求められている価値観といえるでしょう。細溝面状のタイルは、まさにこの潮流を象徴する存在です。 光がつくる陰影、手に触れたときの質感、指先に伝わる微細な凹凸──その “触れて確かめたくなる存在感” こそが、2026年の今、タイルデザインの極めて重要なキーワードになっています。
 

建築史からみる、溝の意匠

細溝──とりわけ縦方向に刻まれた溝は、建築史を振り返ると非常に古くから用いられてきた意匠のひとつといえます。古代ギリシャの石柱に見られる縦溝は、単なる装飾ではなく強い日差しのもとで光と影を制御し、重厚な石塊に軽やかなリズムを与えるための知恵でした。時間帯によって変化する太陽光を受けることで溝は刻々と表情を変え、建築に時間という要素を取り込みます。この考え方は、ローマ建築やルネサンス、新古典主義を経て、現代建築にまで受け継がれてきました。縦の溝は、空間に動きを与えるための極めて建築的な手法です。


アテネ・アクロポリスにあるプロピュライア(ドーリア式の柱)|George E. Koronaios, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

タイルで表現する「細溝」という選択

こうした建築史の流れを踏まえると、現代のタイルデザインにおける細溝表現の意義が、よりはっきりと見えてきます。石や木と異なりタイルは工業製品であるため、高い精度と再現性を備えながら職人の手仕事を思わせる彫り跡のような不規則さを表現することが可能です。デジタル技術によって生み出された微細な凹凸は、均質になりすぎることなく自然な揺らぎと奥行きを空間にもたらします。
2025年のCERSAIE(チェルサイエ)で特に印象的だったのは、フラット面状と細溝面状をセットで展開するブランドが非常に多かった点です。壁に細溝面状、床にフラット面状といったように異なる面状を面で切り替えることで、空間に緩やかな抑揚を生み出す提案が主流となっていました。
また、細溝は石目調デザインと組み合わせることで、表情に一層の深みが生み出します。たとえばトラバーチン調と細溝を組み合わせたデザインでは、もともと層状の表情を持つ石目に立体感が加わり、素材としての存在感がより際立ちます。一方、石灰岩調と細溝を組み合わせたデザインでは、柔らかな石の表情に陰影のリズムが生まれ、空間に品格をもたらします。こうした「石目調×細溝」の表現は、単なる意匠の変化にとどまらず、素材そのものの魅力を引き出すためのアプローチとして、多くのブランドの新商品に取り入れられていました。視覚だけでなく、触覚や光との関係性まで含めて素材を捉える──その姿勢こそが、現在のタイルデザインにおける大きな方向性であり、細溝表現が注目されている理由のひとつだといえるでしょう。

石目調×細溝―「サンドエッセンス」と「フィブラージュ」

細溝の潮流を取り入れた2025年の新商品を2点ご紹介します。

サンドエッセンス / Sand Essence NEW

砂丘のイメージと軽やかなマーブル模様の微細な筋が織りなす表情により、石灰岩の上質な風合いを忠実に再現したシリーズです。流動的なラインと有機的な模様が生み出す優しく滑らかな質感が、空間に穏やかな安らぎをもたらします。600mm角と600×300mm角のサイズ展開で、壁・床のいずれにも使いやすく、空間のスケールや用途に合わせた柔軟な使い分けが可能です。石灰岩の持つ穏やかな表情に現代的な質感を重ねた「サンドエッセンス」は、主張しすぎることなく空間全体の印象を底上げする存在です。細溝や凹凸意匠が注目される中で、“触感” や “陰影” を洗練された感覚で取り入れたい場面において、2026年に向けた次世代の空間づくりの潮流を先取りするシリーズといえるでしょう。


海外施工例 カラー3041

海外施工例  屋内床・正面壁:カラー3060  右壁:FIP-U3060  屋外床:カラー3160G
FIP-U3010(平)
FIP-U3011(特殊面状)
FIP-U3020(平)
FIP-U3021(特殊面状)
FIP-U3030(平)
FIP-U3031(特殊面状)
FIP-U3040(平)
FIP-U3041(特殊面状)
FIP-U3050(平)
FIP-U3051(特殊面状)
FIP-U3060(平)
FIP-U3061(特殊面状)
FIP-U3070(平)
FIP-U3071(特殊面状)

フィブラージュ / Fiblage NEW

カラーボディと表面釉薬の一体感が空間全体の格調を高め、石灰岩の風合いをソフトなカラーで表現した上質なシリーズです。特殊面状として展開される細溝は手仕事で刻んだかのような繊細な意匠で、光を受けることでやさしい陰影が生まれます。素材感を程よく取り入れたい空間や、全体の雰囲気を上品にまとめたい場面に取り入れやすく、バランスの取れた表現力が「フィブラージュ」の魅力です。


海外施工例 NXS-X2520・X2521G

海外施工例 NXS-X2521G(カット加工品)
NXS-X2510(平)
NXS-X2511G(特殊面状)
NXS-X2520(平)
NXS-X2521G(特殊面状)
NXS-X2530(平)
NXS-X2531G(特殊面状)
NXS-X2540(平)
NXS-X2541G(特殊面状)

人は空間の中で、無意識のうちに壁に手を触れています。そのときに感じる質感は、視覚以上に空間の印象を心に刻むことがあります。細溝面状のタイルに触れると、わずかな凹凸が指先に伝わり、自然の素肌に触れるような生きた質感が静かに呼び起こされます。均質で整った面が溢れる現代だからこそ「触れて感じる質感」がもたらす安心感や親しみやすさは、特別な意味を持ち始めています。タイルは、面を仕上げる素材から、感覚に寄り添う素材へ。タイルは、再び “触れたくなる素材” として存在感を高め、触れたくなる壁がこれからの空間の新しいスタンダードになっていくのかもしれません。

 
 

2026.1.21

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