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TILE TREND COLUMN #35

チェッカーパターンと赤系大理石の潮流

小ぶりなサイズへの回帰

2025年のCERSAIE(チェルサイエ)では、タイルのスケールに関して興味深い二極化が見られました。3000×1500mmを超えるスラブや1200mm角などの大判タイルが例年通り数多く発表される一方で、300角以下の小ぶりなサイズも再び存在感を放ち始めていました。20世紀後半以降、建築のスケールは拡大し続け、それに伴って内装のモジュールも大型化してきました。1200mm角、900mm角、600mm角といった大判タイルがいまや標準となり、継ぎ目の少ないシームレスな面は現代的で美しい表現として定着しています。しかしその一方で、均質で整いすぎた空間にどこか落ち着かなさを感じる人も増えてきました。人や自然とのつながりに価値観が見出される今、求められているのは完璧に整った空間ではなく、整然とした中にほんの少しのリズムや温もりが息づく空間なのかもしれません。この流れの中で再評価されているのが、チェッカーパターン(市松模様)です。白と黒の強いコントラストに限らず、トーンを抑えたカラーの組み合わせや、複数色で幾何学パターンをつくる構成が増えています。日本では市松模様として、海外ではチェスボードとして普遍的に愛されてきました。


チェッカーパターンの施工事例:近代ホーム株式会社 株式会社せせら工房 「ニューセンチュリー」CEN-R1510・R8600

チェッカーパターンの再評価

チェッカーパターンは、決して新しいデザインではありません。建築史の中で繰り返し用いられてきた、極めて単純な構成手法です。小さな正方形を反復させることで空間に秩序とリズムを与えるこの手法は、20世紀初頭のモダニズム建築にも明確に表れています。たとえば、ウィーンのアメリカン・バーをデザインしたことでも知られるアドルフ・ロース(Adolf Loos1870-1933)は、「装飾は罪悪である」と装飾を否定しながらも、床のパターンによって空間の格調を成立させました。床を単なる面として扱うのではなく、建築を成立させる構造の一部として捉える──それは、現代のインテリアデザインにおいても通用する考え方です。


アドルフ・ロース設計のアメリカン・バーの内部 / SullyWatts, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ヴェネツィアを拠点に活動したカルロ・スカルパ(Carlo Scarpa|1906-1978)もまた、チェッカーパターンやモザイク的な構成を、アドルフ・ロースとは異なる角度から建築へと昇華させた建築家の一人です。彼にとって床や壁は完成した瞬間に終わるものではなく、時間とともに変化し続ける存在でした。クエリーニ・スタンパーリア財団改修の床の構成では、小さな石材や正方形の反復が、歩行による視線の移動や光の移ろいによって少しずつ表情を変えていきます。カルロ・スカルパは、わずかなズレや素材の切り替えによってあえて均質さを崩すことで、床は静止した図柄ではなく “時間を刻む面” になると捉え、チェッカーパターンを建築の時間性として示しました。また、イタリアの建築では、色のある大理石を幾何学的に配置する床や壁が古くから親しまれてきました。特にイタリア・ミラノを拠点に活躍したジオ・ポンティ(Gio Ponti1891-1979が手がけた建築やインテリアでは、石材は豪華さの象徴というよりも空間そのものを構成する要素として扱われています。正方形や市松模様の割付の中に有彩色の大理石を組み込み、床全体に程よい緊張感と調和をもたらす手法は、現代におけるチェッカーパターンの再評価とも重なります。


クエリーニ・スタンパーリア財団の床
Assianir, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

Jean-Pierre Dalbéra from Paris, France, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

赤系大理石「ロッソ・レヴァント」が再び選ばれている理由

ここ数年、インテリアの潮流では赤系大理石の存在感が際立っています。なかでもロッソ・レヴァントに代表される深みのある赤は、2023年頃から建築・インテリアの双方で採用事例が増え、2026年に向けてひとつの定着した選択肢として受け入れられつつあります。これは単なる色の流行というよりも、空間の重心をどこに置くかという感覚の変化と関係しています。ここ数年トレンドのホワイトやグレー、ベージュといったニュートラルカラーを基調とした空間は、軽やかで整った印象を与える一方で、均質になりやすい側面もありました。そこに赤系大理石が加わることで空間は引き締まり、安定感が生まれます。現在、ロッソ・レヴァントは全面に大胆に使われるよりも、床や壁の一部、パターンの中に組み込むことで空間全体を調和させる素材として再評価されています。


ロッソ・レヴァント(rosso levanto)|トルコ産の赤系大理石で、深みのある赤地に白い脈が走る表情が特徴

ロッソ・レヴァントが現代の建築において存在感を与える使い方のひとつが、チェッカーパターンです。赤という色は単体では存在感が強くなりがちですが、ホワイトやベージュ系と交互に配置することで印象は大きく変わります。チェッカーパターンは色が均等に分配され、視線を一点に集中させないため、ロッソ・レヴァントのように表情の強い素材でも過剰な印象になりすぎないのが利点です。むしろ反復の中で赤がリズムとして機能し、空間に深みと記憶点を生み出します。この“強い素材を構造の中に収める”という考え方は、前述した建築家たちが示してきた思考と通じるものがあります。

普遍の美―「ウニヴェルサーレ」

2025年12月の新商品「ウニヴェルサーレ」は、まさにこの潮流を先取りしたシリーズです。

ウニヴェルサーレ / Universale NEW

イタリア語で“普遍的な”を意味する名の通り、小ぶりなサイズと大理石デザインが持つ、時代を超えた普遍性を表現しています。大理石のタイムレスな美しさを600mm角と300mm角の正方形で展開し、クラシックからコンテンポラリーまであらゆる空間に対応する汎用性の高いシリーズです。また、「ウニヴェルサーレ」の0680はロッソ・レヴァントをモチーフにした色とデザインです。300mm角サイズが赤の印象を強調しすぎず、空間に自然に馴染むため、赤系大理石をバランスよく取り入れられる使いやすいシリーズです。


海外施工例 FEN-R0610・R0680

海外施工例 FEN-R0610・R0670
0610 / bianco barga
0620 / oro versilia
0630 / crema rezzato
0640 / blu montalto
0650 / bluno alicante
0660 / nero bilbao
0670 / verde alpi
0680 / rosso levanto

建築空間は、時代の価値観を映す鏡でもあります。小ぶりなサイズや大理石──それらは決して新しい要素ではありません。しかし、いまの感覚で見つめ直すことで、空間は新しい価値を持ちはじめます。時代の変化とともに、こうした「普遍性」をどう活かすか。その視点が、これからの空間づくりを左右していくのかもしれません。

 
 

2026.1.8

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