Tile Column
たいるこるん
Vol.03 「コルビジェのカラーパレット
 
 

ル・コルビジェ。彼の名前を説明するにはあまりに有名な建築家。自然豊かなスイスに生まれ、芸術溢れるフランスに暮らしたその人は、建築の歴史にモダニズムをもたらした第一人者だ。トレードマークの太く丸い黒縁メガネを通してコルビジェが見たこの世界は、いったいどんなものだったのだろう。
 

 
 

2016年の秋、イタリアのメーカーから新製品「Le Corbusier」が発表された。それは、とても色彩豊かなラインアップで、青はただの青ではなく、緑もただの緑ではない。どこか、すべての色が、隠し味にグレーを混ぜたような何ともいえないまろやかな色。独特の艶があるけれど、光り過ぎず、表面も、フラットではなく小さく波打っているよう。
 

 

 
このラインアップは、スイス・チューリッヒにあるLes Couleurs Suiss AG社が正式にライセンスを所有するカラーパレット「Polychromie architecturale(ポリクロミーアーキテクチャーレ)」全63色の中から12色を選抜されている。ポリクロミーアーキテクチャーレは、コルビジェが、壁紙メーカーsalubraの為に色彩設計をし1931年と59年の二度にわたり発表したもの。自然界から見出したピグメント(色素)で、どのように組み合わせても、調和するよう考えられている。
 

 

ところで、コルビジェには、1920年代の「白の時代」と呼ばれる作品群がある。それらはサヴォア邸の外観が象徴するように白くて、シンプルで、当時の「住まい」の概念をひっくり返し注目を浴びた。 ―日本も時折白を基本としたミニマルな空間が流行したが、暮らしを囲むものが皆まっ白く無機質で、19世紀の画家アンドレア・デル・サルトや建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉の一部、“less is more”が日本語に変換されて、”無駄をそぎ落とすと豊か”というようなちょっとねじれた意味だけがひとり歩きした感があった。― 
 
しかし、実はその「白の時代」の建物の内観や、30年代の作品の外観には、適材適所に意味のある色が採用されていた。
「色彩は驚くほど効果的な引き金である。それは我々が存在する一つの要因である」
「デザインの重要な側面は、色の調和、また色が人に及ぼす影響である。」
本当に心地のよい暮らしのあるべき姿とは?コルビジェにとって、色はただの装飾ではなく、建築的意味を持っていたということだ。花や木、曇った日の湖の水、早朝の澄んだ空気、夕焼けに当たった砂、山に転がる岩など、暮らしを囲む人工的には創り出せない自然の要素が人間を魅了するのは、いつの時代も変わらない。メキシコの建築家ルイス・バラガンがブーゲンビリア色に染めた壁も、アーティスト、デール・チフーリの光の色で遊んだガラスも、きっとそんな一例だろう。
 

 
 

タイル「ル・コルビジェ」は、このカラーパレットの12色(1200×300×t4.8mm)に加え、コルビジェが「Be’ton burt(ベトン・ブリュット/フランス語で生のコンクリートの意味)」と呼んで好んで使った、コンクリートの打ち放しを模した大判タイル(1200×600・600角×t12mm角)もそろう。彼の多くの建築も、色とコンクリートのコントラストを美しく描いている。
 

 
 
このタイルを使った建築がただ“敬うべきコルビジェを思わせる空間”になるだけではなくて、彼の思想を消化した細胞の一つとして”その先へ”、新しい次代を築くに役立ってほしいと願う。
・・・と、「ポリクロミーアーキテクチャーレ」の本を探してみると、なんと復刻版の中古品でも3.8万円。アメリカのPANTONE社が出すカラースタンダード・システムの色見本を買った際に4万円という痛手を負ったのを思い出す。けれども心はとてもわくわくしたもの。どの業界のデザイナーも、皆が色へ憧れ、嫉妬し、試行錯誤し続けるように、コルビジェが生んだ数々の色も、やはり人のモノづくり精神を掻き立てるのだろう。
 

 
 
たいるこるん、
お次はファッション業界からやって来たタイルをのぞいてみる。
 
 
※タイル製品「ル・コルビジェ」の詳細はカタログ『CREATIVE TILE BOOK』に掲載しています。
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タイルのコラム「たいるこるん」 BACK NUMBERS


Vol.01
「タイルがイタリアから飛んで来た」2017.1


Vol.02
「タイルの秘境ベトナム」2017.3
 


Vol.03
「コルビジェのカラーパレット」2017.4
 


Vol.04
「ジーンズを超えて」2017.5